アガサ本人が、モチベがまったく上がらない時にいやいや書いた失敗作、と言っている曰く付きの長編。ポアロものです、ヘイスティングスは出てきません。
本人が言うならまぁ そうなのか・・・でも、逆にそういうものって興味が湧くものです。
で、実際読んでみると、そこまで完全な駄作、って感じは全くしない。やっぱりメンブレしていても、アガサはプロの作家、いやメンブレしてるからこそ、プロの作家なのかもしれませんが。
確かにでもプロットは錯綜しているし、トリックはチープトリックだし、なんだか冗長だったりセンチメンタルだったりと、決して名作といえないことも事実。
すごい気になるのは、女が描く男って、女のために人生すべてを投げ出して愛するみたいなのがおるのですよね、いやいやそんな男いるわけないやんって思う。
ほいで男が考える女ってのは、自分のやりたいことや夢を健気に応援してくれるっていう女なのですわな、いやいや、アホも休み休み言ってください、そんな女いるわけないやん。
つまるとこ両方相手に自己犠牲を求めてるのですわね、愛するってそういうことじゃないの??みたいなことで。
恋愛ってのはくだらねー話ですわ。
でもこの本失敗作にしかない、雰囲気ってのがあると思います。なにか希望に追いすがる必死さみたいなのがある。特に最後のシーンなど、全然アガサっぽくない、爽やかな終わり方をして、なんか良いと思いました。
ワタシの個人的なベストな小説のラストシーンは、夏目漱石の「それから」。この小説の終わり方はそれにちょっと似ております。