本の中にもある通り、アングロサクソン時代のブリテン島の歴史を扱った本邦初の本。
つまり暗黒時代の本です、暗黒時代に何が起こったのか、何もわからない、あまりにもわからなすぎてふるえますね。どうしてこんなにわからないのか、不思議なくらい。ローマの歴史はもうめちゃくちゃ詳細に記録されているのに、ローマ崩壊以後、ルネサンスまでの千年、まったくヨーロッパの歴史は闇に飲まれる。
ある意味、なにか創作をする人にとっては、わからないがゆえになんでも好き勝手な想像の余地が残されていて、歴史の二次創作をするにはうってつけの題材です。
魅惑的な伝説もうじゃうじゃある。もちろんアーサー王の伝説もそうですが、謎の部族ピクト人、ローマ教会、アウグスティヌス、七王国、エドウィン王の放浪記、エグバート王の帰還、そしてもちろんアルフレッド大王。
やっぱり戦国ってのは面白いものです。ブリテンもいわゆる戦国が500年ほど続いたわけで中国と重なる。時代は全然違うのですが。
そして、最後は一番隅っこの国が統一を成し遂げるというのも同じです。ウェセックスも秦も一番端で力を貯めて統一する、隅、ということは後ろから攻められないというわけで守りに徹すれば鉄壁になりますから。19世紀に世界を支配した大英帝国も、いわばユーラシア大陸の一番端から世界を制覇したことになる。
オセロと同じでまず角をとること、これが勝利の秘訣というわけです。そしてだいたい、西から東へ、向かう勢力が勝つという、法則があります。
おそらく偏西風によって、風上に立つことになる西側が有利ってことなんでしょう。煙幕や毒ガスも有効になるから。
それともうひとつ、やっぱりキリスト教の強さですね、ローマも滅び、フランク帝国も分割し、あらゆる帝国は瓦解し、無数の国が滅びてきたのだけれど、キリスト教は2000年以上生き延び続けている、このしぶとさは驚嘆に値します。キリスト教の一体何がそんなにハマったのか、ワタシにはわからぬ。キリスト教に改宗した国は弱くなる、という法則もありますが、最終的には残り続ける・・・中東の戦争でも思いましたが、宗教勢力の恐ろしきタフネス、どんなに最新鋭の兵器を投入しても結局最後に勝つのは宗教だと思い知らされましたね。
この本の作者はゴリゴリの学者ではなくて在野の歴史好きみたいな人が書いてる感じで、ライトでわかりやすく歴史を描いています。厳密なことを言えば、何もわからない。というのが答えなのでこういう書き方のほうが好ましい。
一番気になったのはこの吉川弘文館っていう会社、こんなに売れそうもない歴史の本ばっかり出していてどうやって収支をあわせてるのかしら?富豪が趣味でやってる出版社なん?