2021年9月11日土曜日

1935  The Adventures of Tintin The Blue Lotus 青い蓮

  タンタンシリーズ5作目。


 舞台は満州事変当時の香港、上海、という、世紀末のロンドンと並んでもはや伝説的にありがちな時代設定。そして日本だけはこの時代をモチーフにしない時代。


 当時の香港はまぢで、魔窟、魔界、って感じで、あらゆる良からぬものがいかに中国から搾取してやろうかと策謀をめぐらしているという状態、さらにアヘンが大量に出回り、ジャンキーが歩き回るという、ファンキーな世界だったようです。


 アヘンを大量に輸出して大儲け、なんて大英帝国クズすぎない??アヘン戦争、なにこの正義の欠片も無いやつが勝ちまくる感じ?って歴史の教科書で思いませんでしたか?やってることは完全にギャング、といよりも、ギャング、マフィアというのは大英帝国の商売を見習ったということですね。


 その策謀、の極地、が「満州事変」、ってことになるわけですね。でっちあげで鉄道を爆破して、それを口実に占領する。清々しいくらいクズです。

 というわけでもちろん悪役は日本人で、日本人がいやらしい悪人として描かれているんですが、昨今、日本人が悪役になってるのってあんまり見ないので新鮮ですね。


 現代だったら当然日本人が味方で中国人が悪役になるでしょう、要するに欧米にとって敵か味方か?ってことなんでして、結局こういう「現実」を舞台にしたものってのは本人の利害関係でしかなくなってしまうものです。だから私は「現代」を舞台にした作品って好きじゃないですね、創作の余地が少なすぎる。何をどう描いても絶対どっかから苦情が来ますしね。


 内容もコミカルではあるけどもかなりエグくて、要するに暗殺合戦ですね、毒殺しようとしたりされたり、常に暗殺者に狙われるっていうお話。当然警察も掌握されていて・・っていうやつです。そして悪役であるミツ・ヒラトは割腹自殺して死ぬ。まずミツ・ヒラトって名前がおかしいですし、あんまり日本ってのをわかってないってのが随所に見られます、しかしこれが1935年のヨーロッパが持った日本の印象ってことです。

 また中国人を差別しまくってる白人も登場したりして、非常にセンシティブな問題ばっかり。これ今だったら発禁処分なんじゃないのかしら・・・?


 立川談志が言うに

「警察が不祥事を起こすってのはいいことなんです、誰かが不祥事で問題になってるってことは、まともな警官が多数派ってことですから、全員がマフィアとぐるなら不祥事なんて起きませんからね」


 確かに。


漫画としてというよりも、当時の雰囲気、ってのを知るには非常におもろい本です。