牧師館の殺人、とありますけども、正確には、ヴィカレージの殺人。 Vicarageってのは英国国教会の司祭館のことらしく、牧師、ではありません。
なんてのはまぁどうでもいいこと。こういうキリスト今日の日本語訳なんてのは日本人が勝手に考えてつけたもので、意味のない区分ですしね。
片田舎のヴィカレージで嫌われ者のの治安判事が殺された。
閉鎖的な村で、噂好きの情報通、マープルおばあさんが事件を解決するっていう、マープルシリーズの初登場作品。
おばあちゃんがおばさんかはわかりませんが、老齢の女が探偵ってのは非常に珍しい、アガサ・クリスティらしい探偵。つってもまだこの頃はアガサはそこまで年食ってないので、まさにマープルはアガサそのものであり、作中にあるとおり、チェスタトンっぽいキャラですね。
もちろんミステリなのでオチは言えませんが、登場人物、ミスリード、隠された秘密が非常に多くて、こいつが犯人なんだろうな、って読者が目星をまったくつけられないタイプのストーリーです。
こいつが犯人じゃないのか!驚いた!って感じではなくて、最後まで、事件の概要すらまったくつかめないって感じ、全然尻尾をつかませてくれない。
明らかに怪しいやつがいて、実はこっちでした、っていう意外性ではなくて、ひとり残らず怪しいっていう構成なのですね。
オチは言えませんが、ワタシは、ん??ここおかしくないか?ってとこがかなりあるなと思いました、トリックの合理性とかではなくて、この人物はこういう行動しなくないか?辻褄合わせっぽいな・・っていう違和感。
だから古典的名作、とはいえないけども、それでもなかなか味わい深くておもろいと思いまする。
当たり前ですけどやっぱりアガサは女性のキャラづくりがうまくて、貞淑でいい性格だけど不倫する女、美女だけど高慢で嘘つき、すぐにいい男になびく女、いつも不機嫌で怒っている女、噂好きで詮索好きのババァ、よく下手くそが作りがちな「美人で優しくて善良な女性」 みたいなリアリティ0の女、は出てきません。つまり全員なにかしら嫌な奴なんです。
特に貞淑でいい性格だけど不倫する女、ってのはいいと思いますね。実際そうだと思う、スケベで性格悪い女は不倫はあまりしないでしょう、そもそも結婚してないだろうから。