「権力についておしゃべりをする前に、まず権力者とならねばならない」
ワタシはレーニンについてほとんど知識無いので、レーニンの伝記の中で評判が良いとされるこの本を読んでみました。
レーニンに限らず政治家の伝記ってのは、作者の意見や時代、によって捻じ曲げられやすくて、ヒトラーの伝記なんて、それこそ、ひどいもんです。
どうも昨今、ヒトラー、とか、ナチス、っていう言葉を出すこと自体が禁じられてます、まともな伝記なんて書けるわけない。
レーニン、そしてさらにスターリン、について信頼できる情報は少ないです。なぜか図書館にスターリンの本だけ置いてなかったりする、あるいはスターリンは悪の権化!っていう逆プロパガンタ、本があったりする。
何が悪で、何が善か、なんてなんでオマエにわかるのだ、オマエは神なのか?ってワタシは思います。そういう個人の意見じゃなくて、こういうことをして、こういうことになった、っていう事実だけを伝えてほしい。
レーニンっていう人は、たぶんほとんどの人が思っているような、貧困者の味方!貧しい人々のために社会主義を!っていうリベラルな人ではまったくなく、もっと合理的な考えをする人間で、倫理的に善い、から社会主義を望んでいるのではなく、資本主義は、当然社会主義になる、と考えていたようです。マルクスもそうだ、と言っている。とレーニンは主張している。
正義の味方、になりたいわけじゃない。それよりも社会の進歩の当然の帰結、として社会主義を目指している。
レーニンは貴族であったこと、生活のために働いたことがほとんど無いってこと、そこにほぼ全てがあるとワタシは思う。一度でも、生活のために働かないといけないプロレタリアートになれば、まず、人間に対して希望を抱かなくなる。
レーニンは貴族だったので、常にプロレタリアートとは距離をとっていて、感情よりも合理性を重視するようになったみたいですね。それだけでもレーニンは優秀な政治家と言えます、たいていの人間は、感情のままに適当にその場しのぎの行動をしてるにすぎない。
そしてもう一つだけ決定的なことは、レーニンの兄、この人こそまさに革命家の鑑みたいな人なんですけど、が処刑されてるってことですね。
貴族は体制に対してそれを破壊する意思を持たないし、すぐに買収出来るのですが、この家族を処刑されたっていうことが、体制に対する消えない怒りとしてあります、その怒り、既存の秩序に対する憎悪と怒り、それがレーニンと大衆で上手くシンクロしたのですな。
これもワタシの直感なんですが、レーニンという人は、誰かを助けたいとかいう意思がほとんどない、共産主義によってみんなが幸福に暮らせる、みたいなことを願ってない。それよりも、自分、が革命者、権力者として支配、君臨したいっていう権力志向の俗物だって気がしますね。
マクシム・ゴーリキの言うように
「自分の夢想だけを追い求めている人間嫌い」
さすがゴーリキは的を得てる気がする。
それが後の社会主義、共産主義に繋がっている気がする、大衆のため、労働者の為というのはタテマエ、自分が権力者になりたい、そのために大衆を利用するっていう考え。レーニンは英雄でスターリンは悪党ってことになってますが、実は似通ってる人物です。
ですがそれが間違ってるとは言い切れません、誰だって権力者になりたい、成り上がりたいと思ってます。虚栄心、と言われてますがそれが本当に無い人間なんて皆無でしょう。そしてそれが、意思、とかモチベーション、やる気っていうものですし。
本当に労働者や大衆のためにポピュリズム的な政策をしたら、破産して滅ぶだけですから、そもそも、大衆のための政治なんて、そんなの不可能ですし。
資本主義や民主主義が社会主義、独裁よりも優れてる、とは言い難い。どっちも良くない、です。
現代の日本、みたいな資本主義の国、アメリカの自治州に住んでると、共産主義については悪いことしかニュースとかでは言わない。中国やロシア、北、に対しても、悪いことしかニュースにしない。中国が何か善いことをした!というニュースを見たことがない。逆に、資本主義の悪、みたいなのは一切入ってこない。
現代においても、情報は操作され捏造され誇張されております。
ワタシはマルキストでもなんでも無いですけど、マルクスが投げた問題提起
資本主義は、必ず破滅する
これにちゃんと回答してる人を見たことがない。共産主義を批判する人はやまほどいますけども、資本主義が破滅する運命にある、ってことに対して何も答えを持ってない。ヘラヘラ笑ってるだけです。
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レーニンを弁護する必要もないのですが
レーニンは内戦時に
「金持ちは全員殺せ、ノルマ100だ、とりあえず100人は縛り首にして吊るして反革命勢力をくじけさせろ!」
というとんでも命令を出してます。これを証拠に、レーニン、共産主義の正体はこれだ!抑圧と粛清!って言い立てるのは簡単ですけども、やっぱ内戦時、っていう状況が大事ですよね。そりゃこたつでぬくぬくみかんを食べながら平和と対話を訴えるのはたやすい、しかし戦時、いつこっちも暗殺されるかわからない、って状況で同じことを言えるのか?ってことです。みんな戦時中はこういうことを言うもんですわ。しかもレーニンだけの意見ではないでしょう、金持ちども、既得権益者を皆殺しにしてやる!!っていう憎悪はいつでも社会にくすぶっている、現代でも、です。それに誰が火を付けるのかって話。
ワタシの意見としては、正しい、政治、なんてない。全員を幸福にするなんて不可能だし、結局はどんな主義主張も同じで、ある特定の人間だけが優遇される、それが誰か?という違いだけしかない。
ただ平等とは全員が不幸になることだ、って考える最悪のグループもいて、そいつらには気をつけないといけないと思います。要するに宗教勢力と死ぬほど無知蒙昧なポピュリスト。反知能主義。そいつらは皮肉にも、人道主義、と呼ばれていたりする。
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政治的なことじゃなくて物語としてもやっぱドキュメンタリーは面白いです。ボルシェヴィキがどうやって資金を作っていたのかっていう一番気になるところですが、なんと銀行強盗と結婚詐欺などをしていたようです。なるほどなぁ。革命ってのはそういうことなんだなぁ。
またレーニンが何度も挫折しているのにまた幹部に返り咲いているのは、レーニンが頭でっかちで党内をしっちゃかめっちゃかに分裂させるので、秘密警察がスパイを送り込んでレーニンが幹部になれるように応援していたのです。つまるとこ敵に利用されてたわけです。なんで秘密警察はそんなまどろっこしい方法をとったのかは不明。
さらに二月革命のあとのボリシェヴィキがどうやって活動資金を得ていたのかというのも面白くて、ボリシェビキは即時停戦を表明していたので、帝政ドイツが大量の資金をボリシェビキに突っ込んでたんですね。
また帝政は厳罰主義ではなく政治犯を捕まえても、流刑とか懲役にして死刑にあまりしなかったのですね、それが結果的には転覆させられる要因となった。それを見ていたスターリンが自分は敵はすぐに死刑にする。っていう方針を取ったのは納得です。目の前で、死刑をしなかったために帝国が滅んでいくのを見てるんですから。
死刑にしなかった、ということで感謝するやつはいないのです、少しでも甘さを見せるとつけあがり、復讐する、まさに監獄にぶちこまれてから復讐した自分自身の経験から、粛清するようになってことですね。
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読んでて思ったのですが、社会理論学者、というのは絶滅したんですね。マルクスだのウェーバーだの、まぁレーニンもですが
「社会はこうである、だからこうするべきだ」
ということを主張する学者ってのはいなくなりましたね。政府の御用学者ばかり、ようするに
「国際協力をして、平和的に、問題を解決しましょう」
っていう、要するに何もしないってこと、何も主張しない学者ばかりになりました。文科系の学問はなんの役にも立たないことを暇つぶしに調べる連中となりました。
何を学者が考えても無駄である、というより誰がなにをしようと無駄である、という結論を出したのかもしれません。
あるいはもっと本質的に
なんで他人の幸福を望まないといけないのか?
という根幹が崩れてしまっているのですね。
社会を変えていくのは、言葉、や意思、ではなくて、自然科学の数式、から生まれる、兵器、である、さらにそれは社会を、変える、だけで、良く、なるとは言えない。
社会学なんてただの無駄話でしかない。これが大戦の出した結論なのですね。大戦というより、核兵器、のもたらした結論だと言えます。
共産主義、の目標は、抑圧と搾取のない社会、と作ることでした。結果的にそれは失敗した。晩年のルソーは全てに絶望して、結局社会は抑圧でしかない。と言ってたといいます。
なんだか昨今自殺が増えてるようですが、それもわかる、という気がします。感情論で、自殺はいけない、というだけで、理論的に、社会はこうなる、こうすればよくなると言うやつは一人もいない。理論的には、社会は悪くなるし、これからも悪くなる一方である。競争はさらに激化し、抑圧はさらに大きくなる。むしろ自殺しないでまだ生きてるほうが非合理的で感傷的と言えるでしょう。
社会は良くならないから自分だけが金持ちになり、自分がやりたいことをやる、それが出来ないなら死ぬ。至極当然の発想と言えます。