2022年5月22日日曜日

2005 中国の歴史5 中華の崩壊と拡大 

  五胡十六国時代という、中国史のなかでも極めてマイナーな時代を取り扱った本。一つ前の三国時代が知名度の高い人物のオンパレードであるのに対して、この時代の人はほぼまったく知らぬ。
 世界史の授業などで扱われることも皆無。誰も興味を持ちませぬ。

 いわば英雄なき乱世、暗黒時代って感じでして、虐殺、殲滅、内戦、腐敗、不正、裏切り、そういうものがひっきりなしに続き、王朝が次々現れては滅亡していくという時代。いわゆる胡、北方民族の虐殺のやり方は、民族が違うってこともあって、容赦なくえげつないです。
 ただしその中でも、書聖王羲之だの、画聖だの、芸術の分野では第一人者みたいな人物が現れた時代でもあります。

 ワタシの感想では、この時代ってのは、カネ、の時代なのですね。おカネが普及することによって、人々の欲望が数値化されて何倍にも膨れ上がる。人間を、労働力1、兵力1という数値で見るようになる。数値の計算をするように他人を排除したりするようになる。そういう打算的な人間が出てくると、まさにその真逆としてゴリゴリのカルト宗教や狂信者も生まれてくる。
 
 なんでこの時代が教科書に乗らないかというに、消耗戦ばっかりしていて、文明的な進歩は0なんですね、やれ新しい技術だとか、新しい兵器、新しい政治的制度、みたいなものはなく、えんえんと続く進歩のない消耗戦。

 中国だけではなくてユーラシア大陸全体が、暗黒時代なんですこの4世紀~8世紀の当たり。知っての通りローマ帝国も衰退の一途をたどり、キリスト教にどんどん勢力を奪われていく、民族大移動の時代でもある。乱世ってのは宗教の流行る時代でもありまして、中国では仏教が何度か排斥されたりもしつつ、国教にもなると、ローマとまったく同じことをやっている。

 文明がある程度進むと貨幣が流通し、貨幣経済が定着すると拝金主義、エゴイズムが台頭して国家をシロアリのように食いつぶし、文明度の低い蛮族によって滅ぼされる、という流れはいわばあるある、いつもの展開なのですね。そして蛮族は拝金主義の真逆である宗教的な理想主義を掲げたりする。

 でもこの宗教的理想主義ってのはキレイゴト言ってるだけで生産性は低いですから、これもいずれは合理的で科学的な考えをする英雄。乱世の奸雄、によって滅ぼされる運命にあります。 


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 まさに不毛な争い、って感じなんですが、この不毛な争い、絶望しかない世界、ってのは、絵になるのですなー。物語の題材にはピッタリ。すごい芸術家が生まれたのもわかる、そして現実から少しでも目を逸らしたいっていう欲求もあるだろうし

 

 この本の終盤は、この時代の謎の4世紀、で日本はどうだったのか?という歴史ミステリーを読み解く、みたいなまったく関係ない話になっていて、作者が書きたいこと勝手に書きすぎです、あと例によって文章が下手。

 

 結局のところ、わからない、しか答えは出ません。文字が普及しないで記録が残らない倭の国について、結局はわからん。残された中国の文字を一文字ずつ検証みたいなことしてんですけど、残された一冊の本のしかも切れ端みたいなので全体像なんて見えるわけない、その時の気分で書いてるかもしれんし、大嘘かもしれん。 

 

 このシリーズ本当まぁまぁちゃんとやってるのに編集が甘いですよね、これだから講談社は・・・