2024年4月22日月曜日

2022 古代オリエント全史 小林登志子

  タイトルだけ聞くと、すごい長大な立派な本みたいなかんじですが、実際には小さな新書です。


 こんな新書で、古代オリエント全史が収まるわけないだろ、と思われますが、なんと、ほんとに古代オリエントをまんべんなく扱っているのです。

 もちろんほぼ箇条書きです。


 調べればすぐわかると思いますが、古代オリエントを扱った本は少ない、最近で出てる本はほぼこの人が書いている、新書の本だけです。

 バブルでカネがあった1990年ごろが日本の学術出版のほぼ最後で、もう立派な本は出版されないと思われます、新書や文庫本が精一杯。 

 オリエント史、なんて職業にならんし、無駄と思われている、とあとがきにありますが、別にオリエント史に限らず、すぐにおカネになりそうもない文系学問はほとんどすべて消滅の危機にあると思われます。


 本がなくなって電子書籍になるってことじゃなくて、学術本、みたいなものがごっそりなくなるとワタシは思う。

 海外はどうなのでしょう?誰かそういう本を買う層がいて、本の出版が賑わってる国とかはあるんだろうか?アメリカとかはまったく本を読んでるようには思えない。

 トランプ大統領に投票するような人々から見るように、反知性主義、学問軽視、みたいな姿勢が見えます。

 中国やらアラビアは公平な学問ってのがありえない体制ですし、やっぱり唯一本が残りそうなのはドイツだけということになる。第四帝国じゃありませんが、ドイツがまた勢力を拡大するっていう未来が有り得ると思う。


 もちろんワタシの周りにも本を読む人なんて一人もいない。マンガで売上を保っていないような出版社がまだ存続してるのが不思議なくらい・・・と思ったらそんな出版社は無いですね、岩波と山川くらいですが、山川は教科書作る会社だし、岩波が潰れたらいよいよ、出版はジ・エンドですわ。



 内容なんですが、とにかくざーーーーーっと、古代オリエントをながしてますので、ざっくり全体像を見たいという人向け。サーサーン朝ペルシアの歴史なんて誰も知りませんからね。イラクとイランは何が違うのか、セム系、ってよく聞くけどなんやねんっていう人には良い。

 ユダヤ人とアラブ人が今戦争してますが、これは1500年近くずっとそうなのですから、この先数年でなにか解決するとは思えない。少なくとも、1000年はかかりそうです。


 しかもユダヤ人とアラブ人は全然違う、異質だから戦争してるとほとんどの人は思ってるでしょうけど、実はめちゃくちゃ似通ったグループなのです。同じだと言ってもいい。

 人種ではなくて、宗教、によるグループだし、自分の考えを絶対に捨てない、曲げない、妥協しない、他の宗教を認めない。宗教的には兄弟関係だし、ほとんど同じです。双子の兄弟喧嘩みたいなものです。


 だから正直、外部に出来ることは何も無いと言っていいとワタシは思うものなり。特にユダヤ人に関しては2500年以上、一切他者と妥協して話し合うということをしない人々なのです、世界で一番会話が成立しない人々と言ってもいい。それでも対話したいと思うなら2500年以上説得してみるしかないですね。