2018年1月4日木曜日

1911  現代日本の開化 夏目漱石

 夏目漱石による演説です。

 現代日本の開化というのは、どうしても必要だったので無理にやった上滑りの開化であるが、そうするより他に無いのだから仕様がない、不幸な結末である。というような内容。

 文明というものは、労力の節約、つまりは楽をしたいという願いから発展してきたものであるが、文明がどんどん進んでも、競争が激しくなるばかりで、楽が出来るどころか、生活は心配と不安ばかりで、野蛮時代とほとんど何も変わらないのではないか?
 
 また西洋が自発的に時間をかけて作ってきた文明を、半分以下の時間で追いつこうとする日本の開化では、西洋人の何倍もの努力が必要となり、結果として神経衰弱に陥ってしまうであろう、みたいなことを言ってます。


 確かにそのとおりで、文明は漱石の時代から100年もたって進歩しましたけれども生活は楽には決してなっていなく、むしろ忙しいというかどんどん時間が無いという次第、税金はどんどん高くなり、物価はどんどん上がり・・・、みたいなことで、文明の進歩より生活は楽になり、快適に生活の心配なく暮らせるというふうには全然なっていない、そしておそらくこれからもそうはなっていかないという気がしています。


 漱石も言っていますが、西洋のほうが強いのだから西洋のルールに従うほかはない。それが真実でして、真実というのは知らないで良かったと思うものかもしれないと言っています。文明が進歩するには競争しなければいけないわけで、文明がいくら進歩したってそれだけ競争をしていかなければならないのだから永久に生活が楽になることはないし、競争をやめれば、滅びるしかない。それが文明の真実、なのですが、かといってどうしようもない。

 不幸な真実ですね。