前回は悪本を紹介しましたけれどこれは良本です。一家に一冊あってもいいくらいです。
本屋にいくと「中国の不動産バブルが破産する!!!驚愕の事実!!!」
みたいな大言壮語、誇大広告が蔓延してますが、この本は、そういう、世界が終わる!!方式の煽り、に対してどう反応すべきか、という、アジテーターに対しての対策、がかなり丁寧に書かれています。これは珍しいです。
だって出版社、がそのアジテーター、だから。メディア業界、というのが、その、人々の不安を煽り立てて、バカから金をだまし取ろうという犯人そのものだからです。特にこのダイアモンド社、みたいな投資系の出版社なんてまさにそれ。「FXで手軽にお小遣いを稼ごう!」みたいなことをやってるとこです。
うん、FXで手軽にお小遣いを稼ごう!、って思ってるやつは、限りなくただのバカです。まさにカモがネギ背負って来てるとしか思えないやつ。だからそういうところからこんなちゃんとした本が出るというのは驚き。
けどまぁこれも詐欺の常套手段なのですけどね。
「まず真実、を与えて信用、を勝ち取り、背中から刺す」
いくつか本当に有用な情報も混ぜること、これが詐欺のテクニックというわけ。
でも何にせよその有用な情報は有用なのは間違いないことなので、これは拝聴しないといけませぬ。そして煽りの裏にも情報が秘められているとはよくいうこと。
最初に書いた中国のバブルが!!
っていうのだって、つまりはこの作者たち、が中国のバブルが炸裂することをのぞんでいるということ、未だにアジア蔑視が根強いこと、さらに中国経済が破綻して日本の製造業が盛り返すという夢を未だに描いてる旧世界の住人であること。日本の商品は質が良くて中国は良くない、という神話、をまだ信じてること、そしてこれが世間、の大半だってこと、いろんなことがわかります。
この本さらに内容はいい本なのに、外装デザインは黒塗りで白の抜き文字という、おどろおどろしい感じ、煽り感にあふれておる。
内容はちゃんと合理的に誠意があるように書かれています。ちゃんと理屈を説明しております。しかも、キレイゴト、を吐いているだけってこともありません。リスクの少ないものにだけ分散投資しておくのが一番、というただの常識アドバイスをするだけでもありません。じつはこの保守的で当たり前のことしか言わないヤツ、あるいはひどめにハザードマップを出すヤツ、これもアジテーターと同程度にクズだとワタシは思ってます。精確な数値があるとして、それを多めに言うのも、少なめに言い過ぎるのも同じだけ間違っています。けど社会的には、保守的なほうは責められることが少ない。
それって悲観的なことしか言わない参謀みたいなものです。
「よくわかりませんがたぶんワタシ達の艦隊は最悪全滅しました」
って言ってるみたいなもの。
「カミカゼが吹いて我が艦隊は無敵なり!敵を殲滅するでしょう!」
って言ってるこいつと同程度にバカです。
ちゃんと数値を出せ!でもこのちゃんと数値を出す、ことを誰もが嫌がります、面倒臭いし、誰かを騙そうとしてると一目瞭然でわかってします。きちんと計算して数値、を出す、これが詐欺に合わないための唯一の手段だとワタシは思うものなり。
この本にはもしも最終手段として全然金がなかったら有り金プットオプションに張りまくってギャンブルを打て。ということも書いてあります。どうせ死ぬなら最後に博打を打て、という合理的ではあるけれども世間的にはタブーとされていることについてもちゃんとフォローしております。これはすごい偉い。
けど本当は矛盾してますね、どうせ自殺するなら、最後にめちゃくちゃやれ、っていう合理的、な判断をみんなするとしたら、リスク分散、なんて無駄です。社会がめちゃくちゃになったら、ルール無用になってしまう。
ともかくこの本の結論は一つだと思います、デフォルトで財産がなくなるのもそうだけれど、その時に悪へ堕ちる人間たち、が一番恐ろしいということ。別に貯金が0になったところで、たいして関係ない、どうせはじめから0みたいなもんだし。っていうヒト(じつは一番数が多い)にもリスクは降り注ぐ、失業者が自殺するとありますけど、自殺するならいいとして、それがカルトやテロリスト、ギャング、になる可能性も多いにある。北斗の拳状態、になったら、リスクヘッジ云々ではなくていきなりモヒカンがバイクに乗ってやってきて・・・ってことになる。
ただこの本にもやや問題があります
さんざん苦労してアセットアロケーションしたのに、そのへんの通り魔に刺されて死ぬ、このリスクを計算しきれていません。だから宵越しの金は持たない、という合理的判断もありうる。将来のことなんて考えず今を生きる、これだって、将来が本当に無いとしたら合理的な判断です。
それと財政破綻で消滅した国は無い、と書いてありますがそれは間違いだと思います、本当に滅亡したから記録になってないというだけ、ローマ帝国が滅んだのだって突き詰めれば軍事費の拡大による破滅です。むしろ戦争で消滅したという国はあんまり無い、が正しいと思います。その国民を一人残らず殲滅する、殲滅戦っていうのはほとんど無い。だいたいは吸収されるかバラバラになってるだけで実質的にはその国は存在しつづけるものです。ローマ帝国が滅んだとて、ローマ人が一人残らず殲滅されたわけでは無い。混ざって薄くなっていったというだけです。インカ、アステカだってそう。
あと日本人は危機に対処できない、経験が無いといいますけど、日本が破産、ハイパーインフレ、預金封鎖してたのは1945~50年。いわゆる先進国では、西ドイツ、ソ連についで一番直近に、経験、をしてるんですけどね。つい70年前の出来事。むしろデフォルト経験が無くて金融平和ボケしてるはずなのはヨーロッパとアメリカのほうです。