2018年10月20日土曜日

1885 ハックルベリー・フィンの冒険

 「アメリカの文学はこの一冊から始まった」
とヘミングウェイが言ったとか言わないとか。
 なんにせよ、日本で言うとこの、夏目漱石の「こころ」みたいに、アメリカ文学の記念碑的作品なのは間違いないようです。

 内容はトム・ソーヤーに登場したハックルベリー・フィンの後日談ですが、トム・ソーヤーとはテイストや世界観も異なっており、より深刻で、深い物語となっております。

 だいたいの大筋でいくと、ハックが逃亡奴隷であるジムと一緒に筏で川を下っていく大冒険という物語です。これにより、全面的に人種差別、を扱った物語となり、物議でしかありません。
 ほぼ全編にわたってハックの独白体であり、ハックは南部訛りで話すので、物語全編にわたって方言で書かれてるといったような特殊な文章で書かれています。


 アメリカの歴史って、世界史で殆ど扱われないですよね、たぶん、独立、奴隷解放、までなんと1ページ、ゴールドラッシュののちに、鉄道開通、いつのまにか世界の強国になっていて、あとは棍棒外交・・、世界大戦で没落するヨーロッパを尻目に世界の覇権をにぎるっていう感じ。
 ようするにアメリカ発見から南北戦争、までの間のアメリカの発展の歴史ってのは一切歴史の教科書には載ってません。インディアンを駆逐し、黒人奴隷を大量に導入して農業生産をあげていく、っていうアメリカの基礎、が作られている過程、ここは謎に満ちています。だから日本人としては、アメリカが人種問題でもめてたりしても、なんかよくわかんない、伝わってこないのです。アメリカの根深い問題ってのはこの時代に作られたものだから。

 この小説は1840年台、つまり南北戦争直前の時代の南部、を舞台にしているんですが、アメリカの1840年台ってこんなん!?ってくらいめちゃくちゃです、私闘や決闘、盗みが常態化していてカオスなセカイ。しかし牧歌的で生き生きとしたセカイでもあり、伝道やら日曜学校だの、キリスト教の支配が強い時代。

 アメリカの豊かさ、を作ったのは黒人奴隷であることが疑いようもなく、国家が発展する段階ではどういう方法にしろ、奴隷労働的なものが必要であるというのも事実。しかしわざわざアフリカから奴隷として人間を積み込んで来て、それを働かせて農場を経営するなんて、ものすげーことをやりやがるものだと言う感じ。想像力を超えてます。それも船、で。何ヶ月も決死行を繰り返してそんなことをやるんです。頭がどうかしてるぜ。死ぬのが全然怖くないんか・・っていう感じ。
 ヒトラーとユダヤ人、ヒトラーは最悪のクズ、っていうイメージをさんざん植え付けられていますけども、奴隷貿易、をしてたアメリカと欧米諸国っていうのは、どう考えてもそれ以上にひどいし歴史も長いし、根が深いです。
 けどアメリカを誰も戦争で叩きのめせないが故に誰もそれを追求出来ないという闇のふかーーーい問題です。結局のとこ、何が悪か?というと戦争で、負けること、ただそれだけが悪であって、勝てばすべて許されるんだな・・っていうのが私達の教訓ですかね。

 アメリカの歴史っていうのはそういうことだとワタシは思います、とにかく、勝て、それがすべてである。ってわけです。