2018年10月7日日曜日

1978 おれは鉄平

 ちばてつやによる剣道マンガ??なんですが、主人公のデザインジョーそのもので、ボクシングの次は剣道か・・・でもジョーより良いもの出来るはずないよって思わせますが、内容は実はまっったく違います。

 主人公の鉄平は、むちゃくちゃな親父に育てられてほぼ浮浪児みたいなヤツで学校にも行ってないっていう設定で、これもジョーそのものじゃんって感じなのですが、すぐに金持ちの家の息子だと判明します。

 自然児として育って鉄平は一般社会と全然折り合わないでいたずらや乱暴ばかり・・・、もういいよ!ってくらいこの鉄平は自然児でルールに縛られた文明とはうまくやっていけないという描写が続きます。警察署をダイナマイトでぶっ飛ばしてみたり、電柱にのぼったり、気持ちの悪い動物を育ててみたり、先輩と喧嘩したり、居眠りしたり、酒、煙草、博打・・・
 なんなんだこりゃあ?ページ稼ぎか?さっさと剣道やれよ!っていう感じで、すったもんだするばっかりでなかなか剣道は始まりません。あまりにも自由奔放な鉄平に腹が立ってきますw

 ですが!途中から、鉄平にだんだん好意を抱くようになります、剣道部のキャプテンに死ぬほどしごかれてぶっ倒れたあとに
「キャプテンや先輩はおれたちをしごいてるばっかで自分たちは練習してない、これは俺たちはあいつらを超えるチャンスだぜ」

 とか言ってのけます。どんだけめちゃくちゃにいぢめられたりしても、人を信じて、未来を信じて、頑張らなくっちゃ~、と鉄平はほんとにくじけることが無いんです。
 あの前半のながーーーい前フリは全部この鉄平の本当に折れないココロ、にリアリティをもたせるためのフリだったのか??って驚きます。だとしたらちばてつやという男・・・ごくり・・恐ろしい子!!

 でもほんとに全部計算してたのでは無いという気がします、なんかいつのまにかそういうことになった、物語が動き出したっていうほうが正解だと思う、でもそういうふうになぜか偶然の一致でキャラクターが生気を放ち始める、というのも、ちばてつや・・・恐ろしい子!!っていう才能だと思いますね。そういう、作家運、みたいなのを持ってる。狙ってはいなかったのに、すべてすぽん!ってうまくハマるっていう。

 2ページに一回は、キチガイだ、というコトバを連発していて、今の基準だとハイダメー!っていう描写のオンパレード。鉄平は未成年で酒を飲みまくってるし、もうだみだこりゃという感じ。無茶なシゴキなども、今では全部アウト。でもそれなのに、このマンガは陽のエネルギーを持ってます、非常に前向き。それがすごい新鮮です。現代のマンガは、規制がめちゃ厳しくなってるのに、なんだか根暗っていうのか、社会はこんなにひどいというのを強調するようなものが多いですね。

 最後の終わり方もめっちゃくちゃ、ハチャメチャです。まったく剣道とは関係ありません。剣道マンガ、では無いのかもしれません、途中剣道やってて、とにかく、鉄平というのはむちゃくちゃなガキだ、こういう無茶苦茶な人間がいなくなってしまったよな、っていうお話だと思います。
 
 確かに現代のマンガは型にハマりすぎてる嫌いがあります、月九ドラマみたいに始まった瞬間に最後まで物語がわかる、おそらく言うであろうキレイゴトも、全部もうわかりきってる。このマンガはほんとどういう展開するのか予想外です。これは・・破綻してるとも言えるのですけど・・・。
 しかし32巻も出てる長期連載でして・・いやはや。昨今のマンガに慣れたヒトには勧めませんね、昔のまんがってこんなに無茶苦茶だったんだなぁというのが読みたいヒトはどうぞって感じ。