2022年8月27日土曜日

1926 アクロイド殺し The murder of Roger Achroid アガサ・クリスティ

  アガサ作品でも有名な作品の一つで、推理小説ベスト100みたいなのの常連。


 そしてもちろん種をあかすわけにはいきませんが、アクロイド論争 という論争を巻き起こした、曰く付きのトリックを用いております。どうやらアクロイドからこれが始まったらしい。だから歴史、としてアクロイド、はずっと残り続けるでしょうね、これの出発点として。初の長編カラーアニメとして「白雪姫」が歴史に残るように。


 文句なしに名作でして、どこが名作なのか?と言われると説明出来ませんが、雰囲気、オーラをまとった作品であるのは疑いありません。なんか、この作家ノッてる、調子よくグイグイ書けているってのが伝わってくるのですよね。

 ポワロが引退した、みたいなことが書いてありますからかなり晩年の作品なのかと思いきや、これはポワロの3作目にすぎず、このアクロイド、によってアガサは売れっ子作家としてスターダムに輝いたというわけです。


 作家にはゾーンに入ってる時期ってのがあるもの、それが10年なのか、はじめの数年なのか、中年なのか、晩年なのか、ロングスパートで長いこと続くのか・・・ってのは人それぞれ。晩年にピークを持ってくるような作家はごくわずかであり、だいたい晩年にピークが来る、大器晩成型は大作家の場合が多いです。人生の最後にピークが来るような大作家をワタシはドストエフスキーとベートーヴェンくらいしか知りません。シェイクスピアでさえ晩年の作品は失速しています。

 

 ともかく明らかにこの時期のアガサはノリノリの怖いものなし、ゾーンに入ってるってがビシビシ伝わってくるのです。


 あと、頭の弱い女性、ってのを描かせたらアガサに並ぶものなしですね。男の作家が馬鹿な女を描かせたら、なんとなく女性蔑視って感じだし、たいていの男性作家は、阿呆な女、みたいなキャラクターをはなから作りたくありません。嫌な女というのはいますけども。シェイクスピアでも、阿呆な女ってのはほぼ登場しない。女性にはたいてい好意的です。

 アガサは同性ですから、ズバッ!!と、でも湿っぽくならずに、ヘイトも加えずに、あぁこういう阿呆な女っているよね、っていうのを生きてる感じで描けてますね、これは真似できんなぁと思ふ。

 たいていの女性作家だと、もっとネチネチした、こういうのムカつく、みたいな陰口みたいな感じになってしまうのですが、アガサはパキっとしてる。

 女性の描き方だけじゃなくて、アガサの作品ってのは、全体的にドライでパキっとしてる、ミステリーというとすぐにエログロに走りがちなものですが、アガサのドライな感じってのは、ホームズと並んで、一部の読者だけじゃなくて、みんなに愛される作品の共通点だと思いますね、下ネタに逃げない。しめっぽくなく読みやすい。読後感もさわやか、これはアガサ作品制覇したほうがいいかも・・・