2025年12月4日木曜日

2023 High & Low — John Galliano ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー

  ちょっと前に見た、アレクサンダー・マックイーンが闇の物、自分の命を削ってなにかを作るような破滅型のアーティストだとすれば、ガリアーノは明らかに陽の物。

 光り輝くカリスマっていうところ。カエサルタイプですね。

どう考えても光って見える、なんじゃこいつは!っていうぐらい、圧倒的、にガリアーノの才能はずば抜けてて、90年代、退屈極まりなかったモードの世界を、最高にクールなものに変えていった。

 

 ガリアーノの服っていうかショーは、非常に楽しげで明るくて、美しくて、綺麗で、人々がファッションに求めるものってこれだろ!っていう幸福に溢れた、ポジティブエナジーです。誰がそんなものを嫌いになれるというのか。

 

 こういう光の属性の物、陽のエネルギーをもったカリスマ、ってのは必ず同じ結末を迎える。

 つまりスキャンダルです。どうもこういう明るくて楽しげな天才を、殺したいほど憎んでる根暗のおもんないやつってのがいつの時代もいて、 法律だったり、陰謀だったり、くだらない方法で引きずり降ろさないといけないと狙っている。こういうやつは全然マイノリティじゃなくて、むしろ多数派。とにかく自分よりも幸福な人間が嫌いなのです。

 

 ガリアーノは酔っ払って、オレはヒトラーが好きだね、ユダヤ人なんて死にさらせ!みたいな暴言を吐いてるところを隠し撮りなのかしらんが録画されてすっぱ抜かれ、それでファッション業界から追放されることになる。

 

 反セム主義っていう烙印を押されて。

 

 酔っ払ってるやつの発言を一部分切り取ってめくる、ってのはひじょーにくっだらねぇやりくち。しまいにはドラッグとか自白剤を使ってでもスキャンダルをひねり出すかもしれませんね。

 

 ほいで大衆ってやつはこのスキャンダルが死ぬほど好きなのである。 

 

だが、やはり天才には神が味方してるのか、ユダヤ人が評判を地に落とすようなことをして、反セム主義がむしろ、正義に裏返るということになり、ガリアーノはあのマルジェラのデザイナーとして返り咲くことになる・・・・、というお話です。

 

  さてガリアーノは陽の者でありますが、子供時代はパッとせず、すぐに自分がゲイだと気づくが、周りは無理解、親からも拒絶され、キリスト教からは迫害、自分の内的世界に閉じこもり、ひたすら絵や物語を作っている・・・という、典型的天才の幼少期を過ごします。

 

 やっぱりファッションにおいて、ゲイには敵うわけないと思いますね。だってファッションってのは女の服、でも女の服を見るのは男。その両方の視点をもっている、これはズルであり無敵です。 

 

 でもガリアーノの服は、センスが抜群でどう考えても素晴らしーのですが、普段着に着れるはずもなく、売れ行きは悪く、常に金がなかったようです。これがファッションの一番の癌ですわね。素晴らしー服を作って、すげーショーをやっても、実際は売れる服、地味でつまんねー服を作って、バカ高い値段でセンスのないアホに売らないといけない。

 

 ただここでもやはり天才の運命力なのか、ガリアーノは古臭くなったジバンシーを革新する起爆剤として、パリに招かれ、大成功、さらにDiorのデザイナーとなって、ファッション界の頂点に君臨することに・・・ 

 

 そこからのガリアーノは、まじで覚醒状態というのか、常人のセンスをはるかに飛び越えたショーを展開。まさしくこんなの誰が着るねん、って感じなのですが、そういうことではなく、服という芸術品。まさに一点ものの服というアートって感じになっていきます。 

 まさにファッション・ショー ファッションを使った、ショーであり、服の展示即売会とはまったく違うものへと