2017年12月19日火曜日

1939 太宰治 火の鳥

 ヒトにはヒトを偉くすることなんて出来ない


ドキュメンタリー風に描かれた作品ですが未完です、大筋は架空の娼婦のような生活をしている女性が、黒色テロをして自殺をする男と出会って、心中するが自分は生き残ってその後女優になるという顛末。


黒色テロ!?

 耳馴染みがないコトバですが、黒はニヒルの黒。赤は共産主義者の赤。ってわけ。無政府主義者、といっても、無政府のほうが、自由競争によってうまくいくっていう市場至上主義みたいなのと、完全に虚無、すべてを滅ぼしてやりたいっていう全然違うのを指しますよね。この小説の場合は多分後者の完全な虚無主義者でしょう、たぶん。そのテロリストについてはあまり触れられていません。がすげぇプロットだなおい。っていう感じです。

 テロ、ってのが21世紀を象徴するワードだと思います。けど当然の成り行きといえばそうで、ガチでドンパチとなると核戦争になってしまって両方全滅になってしまう、けど、話し合いでは何一つ解決しない、階級は固定化される・・ってなるとそれが水道が流れるようにテロに向かうわけですね。この1939年の戦前、っていうのもだいたいそんな感じで、どうしようもない空気ってのが充満してる。けど戦前にはもちろん戦争という形がそれが爆発するわけですけど、21世紀は爆発する事もできずに、戦争無き戦前状態ってのがずっと続いてるわけです。

 そういうわけで、現代とシンクロするのはやっぱり1930年台なんですよね、すごい共感、出来るんじゃないでしょうか。

 すぐに死にたくなっちゃう!自殺っていうのがすごく身近に存在していて、生きてくのがしんどいってのが非常に伝わってくる。かっこいいんですよね、そぉいう感じが。かっこいいってのがすごい便利なコトバで、面白い!っていうコトバがあまりには汎用性が高すぎてもはや無意味になってるのに変わる新しい万能用語になるとワタシは思っています。

 かっこいいです、この小説のキャラクターたちは。未完となってますが、こんなの発表出来るわけない、って途中ではっと気づいた感じですね、熱に浮かされるようにダーッと書いて、ちょっと冷静になって、いやいや、これは本当のことを言い過ぎてる。ってやめる。けっこうこれって物書きあるあるだと思います。ちょっと待て、本音を書きすぎてる、だめだよ、っていう気分。