これも1942、というごりごりの戦時下で書かれた作品。
ドイツの新聞に連載していたらしいです。一体どういうテンションとモチベーションで作品を描いてたのか気になりますね。
わたしたちの戦時下のイメージというと、映画「火垂るの墓」と大岡昇平の小説みたいな感じですね。道端では飢えた人の死体が腐敗しているが誰もが無視して放置している、戦場でも兵隊の死体がカラスに目玉をつつかれている、みんなガリガリに痩せこけて餓死寸前っていう感じ
これはでも印象操作ってやつで、わたし的には「最悪最大効果」ってやつです。一番悪いものだけを紹介して、それを最大にクローズアップするっていうネガキャンの基本的なやり方。日本人の生活水準はこんなの、っていって、日本で一番貧乏な人間だけを紹介する、みたいなことです。
実態はそこまで貧乏なやつなんて一握りなのに、まるでそれがすべてであるみたいに見せる。どこでも使われるやり口です。
普通、って言う言い方に注意しろ、ってことですね、これが普通ですよ。普通って何を基準に?あなたの言う、普通、って誰?何をさしているの?と詰めたほうが良い。
実際は戦時下でもそこまで最底辺の状態に追い込まれていたのは一部で、田舎だと戦争なんてあんま関係ないとか、このように新聞でおもろいデシネが発表されていたりするのです。もとごとは一面的に見てはいけないとつくずく思う。
でも創作するには最悪の環境であるのは疑いないのですが、そんな時期に出たこのユニコーン号、がタンタンシリーズで一番のあたり作になるのだからわからないものですね、一番有名だし、映画化もされました。
物語は政治的な要素は排除して、ハドック船長の祖先が乗っていたユニコーン号の隠された財宝をめぐる物語となっています。
なんとはじめての前後編で後半は次に続くって形になっています。
古物商マーケットでふと目にした、船の模型から、不思議な暗号が出てきてそれをめぐる大冒険という、王道の物語ですが、やはり王道とはいいもの、わかりやすくて面白いです。政治的なことを一切禁止されたことによって、冒険にだけフォーカスされたのが逆に良かったといえますね。何がどう作用するかはわかりません。