タンタンのシリーズ第13作目。
なのですが出版の経緯は非常にややこしいです、大戦末期に描かれ始めたこの作品は、ナチスからのベルギー開放によって、中断されてしまいました。
エルジェはナチスシンパ、いわゆる「コラボ」として捕まったのかなんなのかはわかりませんが、とにかく連載は断絶。
戦後名誉回復が行われて、1948年に、このクリスタル、とその続きが出版されることになったようです。
とまぁ戦後処理のごたごたにめちゃくちゃ巻き込まれたわけですが、このマンガもなんかわちゃわちゃしております、これまでの冒険、スタイルから、推理もの、へと路線変更が行われておりまして、ちょっとテイストが異なります。またこの時期のオカルトブームにも乗ってる感じでして、わぁ戦争の時代だなぁって感じです。戦争の時代って絶対にオカルトブームが起こるのですよね。現実逃避的になるのです。
インカの秘宝に手を出した調査員が次々と謎の昏睡状態に陥り、カルキュラスが攫われて・・・犯人を追ってなんとペルーへ・・・
エルジェはコラボとしてほぼ社会的に抹殺みたいな状態に陥ったわけですが、この作品は人気で、結果的に続きを待ってる人たちのおかげで名誉回復されたみたいなことなんでしょう。内容自体はナチスシンパ、アンチセミティズム的な要素はまったくありませんから。
この「コラボ」の問題は非常に根深くフランスに突き刺さった問題で、ド・ゴールがすべてを無かったことにしよう!!っていう方針を出さなかったら、フランスもドイツと同じように分裂してただろうと言われております。今もタブーなんですこの話題は。