2024年8月10日土曜日

2000 日本の歴史00 日本とは何か 網野善彦 講談社

  講談社の日本の歴史シリーズの0巻。

 0巻ということでシリーズ全部を総括して紹介してるのかと思いきや全然違う。


 まとまりがなくて読みにくい本ですが基本的には


「日本」という呼称は7世紀ごろに使われ始めて、それまで日本、なんて国はなかったし、さらに日本、が今の日本の地域を支配したのはずっと先のこと、明治になってからだってこと。

 政治家たちは阿呆なので、神武天皇とかを信じてるが、断じて認めないということ。


 百姓は農民、日本は米食、などという、日本史の常識、は全部間違い。ほんとはもっと多様性があるし、西と東でも異なる。

 

 封建主義、やら農業を基準にして考えるのは、マルクス主義的進歩主義史観であって、それは多様な歴史を単純化しすぎている。


 ってな感じです。

 なんか文章がすっごい読みづらい。これはでも専門家向けには、ちゃんと何をリソースにしてるか、ってのを説明せんといかんし、一般向けには詳細に典拠を出すと煩雑すぎるという板挟み状態。


 政治家どもはうんぬんかんぬんっていう作者の政治的主張はまじでどうでもいい。学者ってのは全部政治家のせいにするけど、自分では何もしない。

 ペリクレスが言うように、知識があるのに政治にきちんと参加しないこと、知識に頼って柔弱に堕すること は独裁と同じくらい悪なのであって、自分が無力、無能だってことへの反省がなさすぎるし、自分で何かを変えようとして始めて、キレイゴトじゃなにも変わらないということとか、政治家がなんで阿呆なのか、阿呆のフリをしてるのかなどの理由が理解できるのだと思います。

 この学者は批判するだけでなにも行動しないでいい、っていうあり方、は一体なんなんですかね。

 

 百姓がすべて農民であって貧しい、という固定概念は間違ってる、という話ですが、これはまじで本当にそう。


 百姓のイメージというと、ぼろぼろの服、重い税で食うや食わず、餓死寸前、っていう悲惨な農民、っていうふうにだいたいのもので描かれてますけど、いやいやそんなクソ貧乏だったら、どんどん人口は激減していくに決まってる。

 実際には農業だけじゃなくて、漁業もやれば林業もやり、いろんな手仕事や流通もあり、金持ちの百姓だっていたに決まってるのです。

 そのなかでも最下層の最底辺の貧困層が、百姓の9割、みたいなように描かれてる。そんなわけない。

 縄文時代の遺跡などでも、ワタシたちの想像よりもずっと豊かで文明が進んでいるのです。それよりも何千年もあとなのに、死にそうな農民ばっかりってことないでしょう。



 マルクス主義的進歩史観にとらわれすぎ、ってのもこれはその通りです。勝手に分析しやすいように取捨選択して単純化して、全体をまったくとらえられてないってことになりがち。ただ単にめんどうくさがってるのですわ。

 ただ逆に、実は女性も社会の中心として活躍していたのだ、っていう逆差別的なとりあげかたも気になる。

 そうあってほしい、ことをピックアップするのは、弁論、であって、学問とはいえない。



 なんにせよ、よみずれー本なのであまりおすすめ出来ません。やっぱ講談社じゃこの程度なりか。といって岩波の本もスーパー読みにくい。

 日本の通史、みたいなのでいい本はなかなかないですね。くだけすぎててざっくりしすぎてるのと、なんだか余分な話ばかりで、まとまってない本ばかり。