12夜、という題名は、クリスマスからの12日間のお祭り期間に上映させるためにつけられた名前でして、劇の内容自体とは殆ど関係がありません。
劇の内容はいわゆる、ロマンティック・コメディ、と言われる、恋愛とコメディを組み合わせたシェイクスピアの喜劇のスタイルがあって、その中でも、たぶん真夏の夜の夢(これはファンタジーロマンティック・コメディって感じですけど)と並んで代表作といわれるのがこの十二夜なんじゃないですかね。
プロットは、兄が難破して死んだと思わっている妹が、男装をして兄そっくりになってしまい、その妹を兄だと勘違いして誤解が誤解を産み、それに組み合わせて、公爵とオリヴィアの恋、道化たちによる真面目一本槍で融通が聞かないマルヴォーリオをからかってやろうという悪巧み、っていうプロットが絡み合って進行していきます。
複数のプロットを走らせて最後に大団円を迎えるというスタイルはシェイクスピアの得意中の得意なんですが、この劇は4つくらいの筋を同時進行させるというかなりの荒業を使っていて、さらに道化のギャグも冴え渡っており、また歌、も多いです。
普通、というか近現代の演劇ならば痛い目を見るのは酒を飲んで馬鹿騒ぎをして冗談を言う奴らです、産業革命がもたらしたピューリタニズムというのか、近現代では、酒を飲んで楽しくしてるやつら=悪。なんですが、シェイクスピア的には酒を飲んで冗談を言うやつを諌めて真面目にやれ!と糞面白くもないことをいうヤツの、ほんとのところは自尊心で凝り固まっていて、実は横柄で虚栄心が強いあいつらこそ、さんざん笑いものにしてやる標的なんですね。
これは今となってはものすごい新鮮です、真面目できちんきちんとしたことをするやつは良い奴、っていう、仕事をちゃんとするやつは偉いっていうのはもう今では、常識、になっているので、そういう人間が道化や酔っぱらい、女中たちに良いように笑い者にされるってのは、他には見られないものですよね。
そういう人間の内側に潜んでいる、他人を見下してやりたい、とか野心みたいなものをえぐりだして嘲ってやるっていうのは、さすが、シェイクスピア大先生って感じ。
この作品、の次がハムレット、を描いたというのが定説になっていて、そのハムレット、を中心として十二夜を読み解くってのが普通になっています。あまりにも有名なハムレットに向かう道筋をどうやってシェイクスピアは考え出したのかっていうのが問題なんですね。
ともかく、シェイクスピア喜劇の中でもトップクラスの完成度を誇る、シェイクスピア全盛期の作品なのです。おそらくシェイクスピアが30代半ばの頃、経験と才能が最高潮にMIXされているって感じですね。