2017年7月11日火曜日

1603  All's well that ends well 終わりよければすべてよし  シェイクスピア

 制作年代1603年としてますが、実際には時代が特定出来ない作品す、恐らく、アイデアだけ書かれて、実際には完成されなかったり上演されなかった、つまりはボツネタであろうとワタシは思います。


 内容はデカメロンの中にある物語から取られています、がすごく物語がトリッキーというか、なかなかわかりにくい感じでして


 非常に簡単に言うと、身分の低い女が、貴族の家に養子となっているのですが、その貴族の跡取りの伯爵と結婚して愛される為に、策略を用いて、最後には愛を獲得するっていう物語です。


 これは今の感覚からするとすごい妙な感じがする物語でして、身分の低い、女性、がどうにかして成り上がるというか幸せを掴むという物語でして、今の身分は平等、的な価値観の世界からすると、非常にわかりにくいですよね。


 でも身分性の社会では、爵位の無い女性が、貴族を落とすっていうのは成功譚として成立してるんでしょうね、ともかく現代の文学では見られない型を持った物語なんです。


 処女とセックス、っていうのがテーマでして、自分とわからないように伯爵を誘い出してセックスをさせて、見事コドモを孕むことで相手を屈服させるっていうオチなんですが、今では全く見られないオチですよねこれって。女のほうから積極的にセックスを願うっていうのは、今ではエロビデオでしか無い、しかも、コドモが出来てワタシの勝ちね!みたいなことって無いですもの。そんなの見たという経験が無い。
 
 
 昔の女性は貞淑で、身持ちが固い、女性は抑圧されていた、みたいなイメージがありますけども、中世はまったくそんなことない、っていうのが描かれています。シェイクスピアはフェミニストでして女性が活躍するのが多いんですよね。だからこの元ネタの題材をチョイスしたんでしょうね、でもなかなかまとまらなかったという感じだろうと思います。




 ただ、ペーローレスという二枚舌の悪党が落ちぶれる、という、誰かが失敗して落ちぶれるという後期シェイクスピアのスタイルが確立される前段階っていう感じでして、たしかにこれは中期シェイクスピアの時代の作品なのだろうって感じもしますね。


 明るくて、幻想的だったりロマンチックだったシェイクスピアの演劇が、だんだんリアルで悲壮なものへと変化していくっていう時代の作品、作品っていうよりは下書きっていう感じですね。