いわゆる四代悲劇の一つなんですが、ワタシ的にはあまりポイントは高くない作品・・・。
四代悲劇といいますが、ワタシが思うには、リア王が抜群の出来、ハムレットはとにかくかっちょいい作品、マクベスはややファンタジー的な魅力を持った作品、そしてこのオセローは昼ドラ的な女性受けする作品っていう感じですかね。これは作品の出来っていうよりはワタシの趣味なんですがね。オセローが一番完成してるっていう批評家もいるみたいです。
内容はオセローというムーア人の黒人であるがヴェニスの将軍として優秀な軍人がデズデモーナという美女と駆け落ち同然で結婚するのですが、自分を出世させなかったという理由で逆恨みするイアーゴーという悪者によって、妻は不倫をしていると吹き込まれて、嫉妬に狂って妻を殺してしまうというお話です。こんな説明をしなくても知ってますよね?w
この時期にシェイクスピアが取り組んできた、性欲と人間という、ほんと超古代からの本質的テーマ、フロイトが飛びつきそうな一番古いテーマを完成させた作品でもあります。ワタシはでもこのテーマがあんまりなんかよくわからないところでして、別に妻が不倫していても、ふーん。ってワタシは思うだけなんですけどね。
オセロー自身が言いますが、オレは愛するが故にこの悲劇を起こしてしまったのだ。と。深い愛故に、嫉妬で狂ってしまったのだと。
なるほど、って思いますね。ワタシは自分で言うのもなんですが、愛情が淡白な人間ですので、オセローの気持ちがよく理解出来ません、しかしオセローという人物は、ヒトを愛することに長けた人物であるのです。
このオセローという演劇の一番の売りはやっぱし主人公が黒人であるってことです。当時の黒人差別が盛り込まれているということで誤解されてるヒトが多いと思いますが、シェイクスピアは黒人に対して差別を持っていません、シェイクスピアほどヒトを差別しない人間なんてこの世にいないとワタシは思います。シェイクスピアは最悪の貧乏人や最低の悪党であっても、限りなく魅力的だ!なんて人間的だ!って愛するような人間です、どんな人間でも魅力的なキャラに昇華させるのですわね。悪党どもならず、金持ちの鼻持ちならないヤツ、ピューリタン気取りの偽善者、そういう俗物も大好きですからね。
オセローはイアーゴー自身が言います
「オレはあいつが大嫌いだが、あんなに誠実で愛情深く高潔な人物はいない」
悪党であるイアーゴーがそういうんだから間違いないでしょう
黒人であるにせよオセローは非の打ち所がない人物なのです。
で!イアーゴーの分析通り、愛情深いこと。がオセローを破滅へと導く。
これはよくよく考えるとすごいプロットですよね、オセローは何一つ悪いことをしていないが、ヒトを愛するので、悲劇的な結末を迎える。
実はものすごい不条理ですよねこれって。勧善懲悪の真逆、善であるがゆえに罰せられる。
悪党であるイアーゴーは最後には自分の妻に裏切られて捕まってしまいます。悪が強すぎた故に味方に裏切られる。イアーゴーは自分の妻を殺して逃げだすのですが、 徹底してます。
徹底してるがゆえにこのイアーゴーというキャラクターは、ものすごいかっこいい、美しさを持ってると思いますね、リチャード2世タイプ。
しかしイアーゴーはなんでそこまでしてオセローを憎んでいるのか?自分を昇進させなかったからという理由はあるにせよ、それでここまでするか?っていうくらい悪の道をひた走る。その理由は何か?ってのを考えると、それも、オセローが完璧な人間である、そこにしか理由が見当たりません。オセローが完璧な人物であるということ、まさにそれが、オセローが憎まれる理由なんですね。
こういう一般のソレ、とは真逆の展開をさせることで、人間の本当、をえぐり出すという後期シェイクスピアの恐るべきテクニックが発揮されてるというわけですなぁ。
なんとなくこの作品はドストエフスキーの「白痴」と似てる感じがしますね、白痴もまだワタシが学生の頃に読んだ時は、なんだか・・よくわからん話しだ。と思ってたのですが、何故かだんだんと、白痴の世界観ってのがワタシの中で膨らんでいて、ロゴージンの闇に閉ざされた家とボケてしまった母親っていうイメージがものすごい鮮明に浮かんできたり、ロゴージンの十字架の話なども何度も急に思い出してしまいます。そういうことってないですか?
誰も救われない全滅エンド、やっぱりこれがワタシは大好きなんだよなぁw