2018年8月3日金曜日

1947 斜陽  太宰治

斜陽

 この作品はオフィシャルな太宰の年譜みたいなもので、太宰の代表作とされているもの。太宰は自分が薬物中毒で脳病院に入っていたころ、つまり「人間失格」の烙印を押されてしまった頃、のことが生涯頭から離れなかったようで、この作品もその時代の経験が明確に現れております。

 ワタシ、の個人的な好みなんですけど、ワタシはジャンキーの文体と自殺者の文体、が好きなんだなって思います、ワタシの好きな作品ってのはほぼそれです。あっこれだ、これを読みたいんだよなって思う。夏目漱石にもそれがあるんですよね。

 この小説も終盤は遺書、という形式となっています。ワタシは小説っていうのはやっぱりそういうものだと思います、誰かが死んで終わる、それから平和に幸せに暮らしました、なんてそんなわけねーだろって話。

 「人間は恋と革命のために生きているのだ」

 っていう有名なセリフがあります、有名すぎてこの斜陽がその出処だっていうのをワタシは初めて知りました。このコトバだけ聞くとなんか青臭い、時代遅れの響きがありますけれども、文脈をきちんと読んでいくとその恋、と革命、の意味がわかります。ワタシは恋愛小説は嫌いですけど、この小説はそんなワタシにも、恋っていいものですよねって言わせてしまうほどの力がある。

 確かにこれは代表作として善いと思いますね、どういうわけか、非常に陽のエネルギーに溢れている、太宰はもうすぐ自殺するというそのあとの歴史、を知っているワタシたちにはなおさら不思議なんですけど、とにかく若くて美しいエネルギーを持ってる本です。