2021年6月17日木曜日

1929 タンタン ソビエトへ  Tintin in the Land of the Soviets

  おそらく最も有名なバンド・デシネの作品。つまりはマンガのことなんですが、フランス・ベルギーではデシネ、アメリカではコミック、日本ではマンガ、と言われています。


 それだけじゃなくてエルジェは最も有名なベルギー人じゃないでしょうか?他の人だれも知らん、サッカー選手で有名な選手はいますけども。


 マンガのルーツ、を探していく、マンガオリジンのコーナーがワタシの中で始まってますが、タンタンがマンガのルーツだとワタシは思いますね。もちろんそれ以前にもマンガっぽいものはいっぱいあるのですが、このタンタン、がマンガフォーマットの確立に相当寄与してる気がします。


 つまりは「面白い」ってことです。「面白い」ってことがマンガの一番のルーツだと思います、つまんないマンガっぽいものはこれより前にもいっぱいありますけども、めちゃくちゃつまんない。だいたいそれ以前はとっても短くて、一枚絵が何枚かあるって感じで、マンガになってはいず、長尺の物語を語るってものでは無い。タンタンは結構な尺があり、連載で続き物であり、絵物語じゃなくてコマだけで表現されている、マンガ的表現(エフェクト、効果線)。などなど、まさにマンガっぽいスタイル、が確立されてます。

 さらに、タンタンとスノーウィという人間と犬が主人公、犬もしゃべるが、人間には聞こえない、というこの世界観。犬がしゃべるというファンタジー要素、これも非常にマンガらしいです。


 オフィシャルのマンガの歴史では、手塚治虫がディズニー映画の影響を受けて、マンガに映画的表現を組み入れて、そこから日本のマンガが始まる、っていうことになってますが、ワタシは手塚マンガが面白いとは思えない。タンタンのほうが圧倒的に面白くないですか?


 ここからシリーズがどんどん続くので深くは考察しませぬ。


このタンタンソビエトへ、はエルジェ自身も、適当にソ連のイメージで描いたことを後悔していたらしく、コミュニスト=悪、っていうイメージだけで描かれているややプロパガンタ色の強いものになってます。すぐに逮捕、監禁、銃殺、拷問、っていうことになるのはやっぱこの時代特有のものでもありますけどね、殺伐としておる。

 それはこのタンタンが連載していた新聞が実はファシスト支持の新聞だったことも影響していて、それによって、エルジェもファシストだというレッテルが貼られてしまって戦中戦後に色々迫害を受けたりもしたようです。だから反共産主義的になってるというわけ。


 ベルギーっていう国家自体が難しい存在なのです、ドイツ、フランス、オランダ語がいりまじっていて、当然枢軸側と連合国側で国家的にも分裂してるわけですからね。


 そういうわけで作者的にもこの作品は黒歴史になっていて、ずっと再販されていませんでした。確かにちょっと血生臭すぎてギスギスしすぎていますね、子供向けなのに。