2022年9月11日日曜日

1923  ゴルフ場殺人事件 Murder on the Links アガサ・クリスティ

  ポアロの長編二作目。


まだまだ初期ポアロでして、ポアロの性格が一般のポワロとかなり違っています、自信家でエゴイスト、野心を持っていて、殺人事件マニア。


 まだまだホームズの影を色濃く残してるって感じですね。小説全体も、ホームズスタイルです。というより、他の推理小説作家たちが次々と新しいスタイル、を打ち出していくなかでアガサはクラシックなホームズスタイルを崩さない、正統後継者と言えますでしょう。だから人気が図抜けてあるんだと思います。

 

 まだまだ新人アガサなので、色々と問題ありますね。すぐに色恋を動機づけや導入に使ってしまうこと。

 

目が覚めるような美少女がそこにいた・・・


 っていうおきまりの美女。ワタシの中ではコトバに出来ないくらいの美女、絶世の美女、言い知れぬ魅力を持った美女、というのが出てきたらまずその作品はつまんないと見て間違いない。


 それと、びっくりして気絶する老婦人ですね。

そんなやつほんとにいるんか?って思う。すぐに記憶喪失になるドラマの主人公と同じで、何かショックなことがあるとすぐに失神して倒れてしまう・・・、見たことないですけどねそんなやつ・・・昔はいたのか?いやぁいませんよ。自動車に轢かれて記憶がなくなるようなやつも100万人に1人もいないでしょう。


 あとポアロ以外の人が阿呆すぎる、ってのもありますね、相棒役のヘイスティングスもポンコツがすぎる、ワトソンもここまで阿呆じゃない。ポアロを引き立たせるための踏み台ってのがあまりにもあけすけすぎますね。このへんが、まだ若いなって感じ。


 トリックのアイデアはさすがですが、よく考えたらおかしい・・っていう穴もかなりいっぱいあります。ミステリーの女王もまだ新人ということ。(まぁ33才だから若くもないけど、作家としては駆け出しですね)

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 小説の雰囲気で第一次世界大戦が終わって、価値観がガラッと変わった、特に女性の生き方が変わったという空気感は如実に感じます。アガサ自身もその1人なのですし。


 というより世界大戦で変わった価値観、ってのはずっといまも影響を残し続ける気がします。世界大戦であまりにもバタバタ人が死ぬのを目の当たりにして、人々はどうせすぐに死ぬから好きにやる、どうとでもなれ。っていうふうに変わってしまった。特に若者に

「どうでもえぇわい」っていうのを植え付けてしまった気がします。それ以前にはもっと社会だとか、未来だとか、哲学だとか、宗教だとか、を本気で語るような人間がいた。

 100年経っても戦争後遺症は世界に残り続けてる気がします。