2022年9月4日日曜日

1922 赤毛のレドメイン家 イーデン・フィルポッツ

  突然謎の絶世の美女が現れて・・・


というめちゃくちゃ面白くなさそうな始まり方をするミステリーですが、非常に有名な作品。江戸川乱歩のお気に入りだったらしく、ミステリ・ランキングみたいなので一位になったこともあります。

 

 小説の舞台はダートムア・・・・ダートムア??どこかで聞いたことのあるような・・・と思った方が多いはず、ワタシもダートムア・・?となにかがひっかかった。


 そうです、ダートムアはあのホームズの最高傑作とされる「バスカヴィルの犬」の舞台なんです。同じミステリーとして、ダートムアを舞台にするってことは、必ず意図的なそれだとわかるわけ。いわばベイカー街に探偵事務所を立てるようなもの、絶対アレじゃんってわかるわけです。


 こっからネタバレあるので注意!


 といってもこのミステリはすごいトリックがあるタイプのものじゃなくて、ある程度読めば読者にも犯人やトリックはわかるような感じだと思います。


 一番のトリックは、地の文、です。


 主人公的なポジションである男を、彼は優秀な判断力を持った、才能のある人間、である、と紹介するのですが、こいつは超弩級のポンコツで、才能も全くなければ判断力も0。最終的には「この人は美人だからいい人に決まっている!ボクが好きな人間は無実と決まっているんだ!」的な事を言うクズ人間です。


 でもこれって、ズルじゃない??ってワタシは思いますけどね・・・


 彼女は黒い肌をしてメガネをかけていた・・・


 というのは嘘で本当は白い肌をしてワンピースだった。


それってズルじゃない??登場人物の一人称セリフで

「こいつは脳足りんの阿呆だとオレは思った」

*でも実は天才だった。

 っていうのはアリですけど


これは9月11日の出来事だった・・・(本当は9月13日)、って地の文で嘘つき始めたらめちゃくちゃじゃないですか?


 あえてそうしてるのだとしたら、たしかに非常に挑戦的なミステリであります、それありなの??っていう。ミステリというよりもはやダダイズム的なシュールレア小説ですね。小説という枠組みごと破壊しようとしてる。でもそういうことでもないと思う・・・


 このミステリはそういう問題もありありですけど、描写などは文学的でして、舞台もイギリスからイタリアなど幅広く、スリラー的面白さもある。セリフなども結構含蓄に富んでいる。


 でもワタシはあんまし釈然としませんなぁ、それおかしくないか??っていう部分もめっちゃある。たとえばものすごい美男子と美女、が登場するのですが、突然誰もがそれに気づかなくなってそんな人物はまったく記憶に無いと言ってみたり、突然だれもがその魅力に一瞬で虜になると書いてあったりもする、変じゃないそれ?

 変装の名人で誰にも見分けがつかない、ってのも、うっそぉん、ルパンじゃあるめぇし・・・これがランキング一位??・・


 最初の通り、絶世の美女が現れて・・っていうのは、ワタシとしてはこの時点で良くない気配を感知していたというわけですなぁ。