クリスティの中でも最高傑作とされることが多い作品の一つ。
ですが、いわゆる探偵もの、ではなくて、ミステリーです。
ポアロのもとに挑戦状が送られてきて、その殺人犯は予告通り、ABCのアルファベット順に殺人を犯していく・・・
っていうスリラーと言えるのかも。
探偵もののように登場人物が、明らかにされて、この中で犯人は誰でしょう?ではなくて、完全なオープンスペース、犯人候補は無限にいて、誰が犯人か?を考えるのではなくて、犯人をどうやったら捕まえられるか?という形式。
物的証拠、やトリック、みたいなことではなくて、心理分析、精神分析、みたいなのが主軸になっている、サイコミステリー、みたいなのの先駆けとなる作品です。
そういうわけでこれまでのクリスティの作品からも、かなり異質で別のスタイル、構造を持った作品なのですが、あまりにもこのABCが大当たりしたために、ミステリーってのはこういうものだと思っているヒトも多い。
そのくらい、ABCみたいな小説は数万冊、ABCみたいな物語を使ったドラマだったり、ゲームだったり・・・を含めれば、数百万はこのABCみたいな、物語の型、を持ったものが存在すると思われます。
とくにこの、連続殺人鬼が犯行予告を送ってくる、ってのが映像としてわかりやすいのか、映画などでひじょーーーによく模倣されてる気がします。
そのくらい、「型」、一つのジャンルを生み出した、古典、って言われる作品です。
探偵がいるのに、次々と犯行が行われていく・・・っていうのも、新しい試みなのですが、むしろこっちが普通になりすぎていて、 新しいと思わないくらいです。
これはミステリーに興味があるなら、絶対に読むべき本。ただ、最高傑作かもしれないので、これから読み始めるのはおすすめしません、他のを読んでから、だんだんミステリってのがわかってきた、ってなってから読むべきなのかも。最初に読むと、これが斬新だってことが伝わりづらいかも、それくらい、無限に模倣されているので。
ちょっと別の話になりますが、これがサイコミステリーだとして面白い文章があります
警察の偉い人が連続殺人鬼を称して
「昔は、イカれたやつは、イカれたやつであり、それを科学的専門用語で名前をつけてやつらを療養所へ入れろとは言わなかった。
そしてやつらを療養所のなかで「オマエはいいやつだ」と何度も言い聞かせて、また社会の一員として釈放しようとするんだ」
この作品は1936年です。1936年ですでに、ワタシの若い頃は、頭のイカれたやつを・・・
ってことが言われたのですな。
ワタシも精神病、って言い方が好きじゃないし、認知症っていうコトバもくだらないと思う、といって痴呆症がいいとは思わない
ただ「脳の機能不全」、そういえばいい話じゃないですか?医療なのに、精神、みたいなスピったコトバで茶を濁すでない。