ワタシは勝手にトールキンって19世紀のヒトだと思ってたんですがこんな最近?のヒトだったんですね。ファンタジー文学といえばだいたいまず最初に上がるのがトールキンの指輪物語ですよね。
ですよね、といいつつワタシは読んだこと無かったんですけどw ファンタジーってのは実は歴史が浅いってことですわね、もちろん神話とかそういうのを入れればもっと古いものですけど、科学の時代にそういう神話とかが廃れてしまって、ひどく現実的になりすぎたから、それを埋め合わせる為に、神話を再構成したのがファンタジーってことなんでしょうね、だから19C後半、SFとかと同じ時代のものなんでせう。
このホビット、という本はその指輪物語の前日譚というか、世界観を作りこむための習作というのか。大作を仕上げる時に、その世界観をそのままつかって違うアナザーストーリーをつくるってのは結構作家にとってはよくある手法で、その物語は発表しなかったりするんですけど、いきなり大作を0から書き始めるよりも厚みがあってレイヤーが出てくる効果があります。あのドストエフスキーも創作ノート、といって、小説を描く前に小説を書いてたりします。小説の悪魔ドストエフスキーは一度も推敲なしで小説を書いたってのはモーツァルト神話と同じでブラフだってわけです。
指輪物語はたぶんハリーポッターが現れるまでは聖書とシェイクスピアに並んで売れた本であったみたいですが、今はたぶん、本の発行部数ランキングではワンピース、ドラゴンボール、みたいなモンスターマンガが並んでるはずです。このランキングにマンガが入ってない場合がありますけどね。そりゃでも卑怯です、ちゃんと数字からいくとマンガが上位を独占、そしてハリポタ、コーラン、聖書・・っていう順番でしょう。シェイクスピア・・っていうけど実際にシェイクスピアを読んだことがあるひとはめっちゃ少ない。そこまで売れてるとは思えません、もちろん図書館とかに配置されるので数は出てますけどとてもじゃないけどランキングから圏外でしょうね。聖書よりもコーランのほうが圧倒的に数が出てるはずです、というのは人口でいくとキリスト教徒よりもムスリムのほうが圧倒的に数が多いからですね。
G7的欧米中心の発想とは異なり、ムスリムのほうが多いです、カジュアルなキリスト教を数えると違いますけど、まったくキリスト教徒でもないくせにクリスマスにセックスしたいだけの連中が過半数ですから。
トールキン氏のことまったく知りませんでしたがオックスフォードの言語学の教授なんですね、教授であり作家、なんてぇつまんなさそうな経歴w 夏目漱石か、って感じ。経歴からいくとひどくつまらなそうな作品を書きそうですが、才能はあります。天才は破天荒で変わり者っていうけど、なんでもこなせる八方美人の天才っていうのも稀ながらいるんですね。人物的にもひどくまともみたい、ふむ・・・。ファンタジー系の作家ってそういうまともな人種が多いのかも。ワタシはやっぱし、人格破綻してるぶっ壊れた作家が好きです。
そういうわけで、すごい文法がしっかりしてるっていうのか、文章がキチっとしてます、そりゃ言語学の教授様の文章なんですからね。地理的描写などもひたすら科学的っていうか正確です、川の流れの強さによってここに砂浜があり・・急流があり渓谷となっている・・この山の尾根がこうこうで・・裾野はこう広がっている・・・みたいに。ただはっきりいってコトバで説明されてもちっともわからぬ。
小説の限界っていうのか、情景描写ってのは同じキヲクを持っているヒトにしか伝わりません。
あとちょこちょこ歌やら詩が出てくるんですが、まぁこれも紙の無駄っていうのか・・・・ちっとも何一つ伝わりません、音楽の描写なども。こぉいうまったく伝わらないことを記録みたいに書くってのがさすが学者やねってとこなんでしょう。
物語の筋自体は、自分で読めってことなんですがw 結構いろいろ荒いトコがある気がします。まずドワーフ12人が仲間になるんですけどだいたいこういうのって12人それぞれに取り柄があって役に立つってのが普通ですが、殆ど何の役にも立たないグズばっかりで、何のために12人もドワーフがいるのかわかりません。無闇に登場人物を増やすなってのは作家にとっては大事なことですね。作家自身は頭に描けてるかもしんないけど読み手はちっとも絵がでてきてないってことになりがちです。
それとネタバレですけど宿敵のドラゴン、スマウグを倒す為に80%くらい使ってるのですけど、スマウグは突如現れた人間の英雄の子孫によっていきなり殺されます。は!?ってくらい急激な展開。最後には仲が悪かった、ドワーフ、エルフ、人間が共通の敵が現れたことによって協力することが出来た。みたいなノリです。
ずっと仲間だったドワーフもカネに目が眩んで急に仲違いしたり、単純に愚鈍だったりするという、ちょっとドライな目線がありますね、ゴブリンという共通の敵と戦うっていうことでカネの配分で揉めてた集団が結束するっていうのも、さすが学者先生、ドライな感じを受けます。愛と勇気でまるっと解決ってことじゃなく、共通の利害が一致するところに平和が生まれるっていう。学者の価値観っていうよりは大英帝国的世界観なんでしょうねこれが。そこが普通のファンタジーと違うとこですね。
故郷に帰還したバギンズも家が競売にかけられ、財産も持って行かれて訴訟でもめる。っていうオチ、ほっほぉ。ともかくみんな自分の権利とかを主張するのに必死です。
すべてをキレイゴトと魔法で解決しないってのはこれはいい感じだと思うんですけど、ん?結局何が言いたいの?って読み終わった後にぽかんとします。