2017年1月2日月曜日

1719 The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険

 小説というよりは、ドキュメンタリーなのです。セルカークという実際の人物の経験談をもとにデフォーが実名とかだけを脚色して本にしたということです。
 デフォーという人物は作家ではなく、ジャーナリストなんですね、ジャーナリストというか文筆家、ですね。この時代読み書き技術があるだけでも仕事として成立するのでそれを元にいろんなことをやってる感じのヒトで、フィクション作家では全然ない。
 ロビンソン・クルーソーを執筆したのは60くらいになってから。昔のヒトなのに60から作家デビューって、遅咲きにもほどがある。その後にも自分の経験とか事実から書く手法で小説のパイオニアの1人です。その文体は出来るほうの新聞記者みたいな描き方でスイスイ読みやすい。ほんとに時代を感じさせません。


 やっぱ本当にあったことを題材にしてるとリアリティがまったく違いますよね、これを頭の中だけで考えだせっていうのは絶対に不可能ですもの。
 小説、というのは時代によってどうしても古くなってしまいます、その古さが良いってこともあるのでしょうけど古いのは事実。けど無人島に遭難した人間がサバイバルをするっていうのは古くなりようがないですよね、だから300年前の本でも何の違和感も感じないで読める。今のワタシたちが無人島に遭難してもまったく同じことになるでしょうから。むしろ羅針盤で緯度などを計算出来るクルーソーのほうがサバイバルに長けてるくらい。
 
 船が難破してその船から物を取り出そうとするのですがそこで発見する物のリストというのは、想像では考えつくことが出来ないリストで、そこからサバイバルが始まるのですけど、この道具立てってのは、思いつくってことはまずないでしょうね。

 ミライの物語を書くこと、あるいは100%架空のセカイを書くことってのは、言ってみれば実は裏技、邪道みたいなもんです。知らないコトを書けるわけないんだから。だからだいたいミライの話だったり、まったく違うセカイのはずなのに学園生活を基盤にしてたり、あるいは型、にはめていくわけです。お話の型っていうやつ、復讐物、推理モノ、恋愛モノっていうふうに。王朝物、宮廷モノ、身分違いの恋愛、聖人の一生、ってなふうに。ようするには、ミライの話っぽくパッケージしてるだけで中身は今までのものと同じなんですね。



 よく、資本主義はどんどんみんなの欲望を煽って、やがてそれが溢れかえって人類の文明は危うい、みたいなことをいいますけども、ほんとか?ってワタシは思います、っていうかたぶん嘘ですそれって。人口が増えてるだけで、だいたい個人の欲望の平均値は4000年前から変わってません、というか人間のだいたいのレベルというのか能力ってのはずっと変わってません、一部の天才ちゃんたちは、文字に残して自分がやったとこから続きを初められるようにセーブしといてくれるので技術は進歩してますけども、途中から初められるのも一部の天才ちゃんのみで一般人のレベルってのはアテナイとかの頃からちっとも進歩してません。
 この大航海時代のちょっと後の人々、だいたい1700年くらいのヒトですが、まず殆ど半分くらいは沈没して死ぬであろう船に乗って何年もかかる大航海に出かけ見知らぬ土地に出かけていき、黒人部族を襲撃し、奴隷として持ち帰り(もちろん帰りのほうがもっともっと危険です、奴隷の反乱もあるし、海賊の襲撃だってある)それを売って儲けようなんてことは、今のガリガリの拝金主義者たちにとってもとてもじゃないけども真似出来ません、人間の欲望のレベルってのはここまで出来るんです、最近物欲が増えたなんてのは全くの嘘です。ある意味感動的なまでのバイタリティですよね、なんでこの人達はこんなに生のエネルギーに溢れてるんだろうって感じ。今の人間にそんなこと出来る?? ただ金儲けのために五分五分で命を捨てられるかって話しです、むちゃくちゃですよ、死んだら金儲けの意味ないですやん!奴隷商人というとクズの代名詞ですけど、彼らのやってることはやっぱりものすごいことです。
 今の拝金主義者たちは、全然自分はリスクを取らないで市場を操作するだけで金を儲けようとするからタチが悪いのだ、というのはあるかもしれませんけどね。だけど彼らはジェノサイドなんてしてないし、人身売買に手を出してない、合法的な手段だ!というでしょうけど。

 まぁワタシは奴隷商人のほうがマシかなぁ・・・、どんな酷い独裁者でも前線で真っ先に突っ込むタイプの指揮官がワタシは好きです。天才策士で何重にも影武者をつくって正体を見せないってやつよりもね。


 



 普通ロビンソン・クルーソーとして知られているのは、この生涯と冒険、であり、実は続刊としてロビンソン・クルーソーのその後の冒険もあり、さらに続編の考察、も存在します、が、考察、は宗教的な話ばかりで面白くないので翻訳されないみたいですね。でも月長石でしきりにジジィが読んでいたのは三巻目の宗教的考察、なんだと思われます。