2018年7月27日金曜日

1947 年 の 太宰治 トカトントン  冬の花火   雀   春の枯葉  男女同権  苦悩の年鑑  親友交歓 メリイクリスマス フォスフォレッセンス

 トカトントン

 いわくつきの、短編。何をしてても、どこかでトカトントンという音がして、無気力になってしまうという手紙形式の物語。
 戦後の無気力病の典型みたいな話、太宰はそれに答えて一言

「肉体だけでなく、魂もゲヘナで燃やし尽くすべし」  イエス

  鮮やかというか卑怯なオチのつけかたですけれども、1947の時点ですでに、平和への倦怠というか、自由への堕落、みたいな空気なのですね。



冬の花火

 どういう経緯かわかりませんが小説ではなく演劇脚本です。内容はメロドラマですが、随所に、嘘つきばかりになってしまった日本はこれからどんどんダメになっていくだけだ、という厭世的でやけっぱちな雰囲気が漂っております

 

 戦直後は書くことがたくさんあっていいなぁちきしょう 

春の枯葉

これも舞台台本形式になっております。

 ーーー人間がだめになったんですよ、張り合いが無くなったんです、大理想も大思想もタカが知れてる、僕は今はエゴイストです、そうなってしまいましたーーー
 
 1947年ごろの作品ですが、ズバリと戦後を見抜いています。理想や思想がなくて、ただただみんなエゴイスト。こんな短いコトバで言い表るとは


男女同権

 を、痛烈に皮肉った作品。男女同権となったから、女には、女は弱いから・・という言い訳をさせずに、ハッキリと女性の暴力を摘発してやるという内容。
 これもすでに現代を見通した作品ですなぁ。女性が一番、男性と同じように扱われることを、心底憎んでいるのです。


苦悩の年鑑

太宰治の思想史的なもの。戦前は完全に箝口令となっていた、プロレタリア革命家時代の話があります・・・

 プロレタリア独裁・・、金持ちはみな悪い、貴族はみな悪い・・・ギロチンの無い革命は意味がない・・

組織の無いテロリズムは最も悪質の犯罪である

 もうひとつやはり当時を生きてきた人間の証言らしいところが面白いですね、プロレタリア革命運動が盛んだったころ、一方ではレヴュウ、ジャズ、ダンスホールというアメリカ的消費主義の文化も盛んになっていた、ソ連とアメリカの両極端が激突し、戦前、戦中の狂熱の30sだったというわけ。
 さらに2.26事件の裏で阿部定事件、という、メディアの注目をかっさらった猟奇殺人事件が起きて大いに盛り上がっていたという話。教科書では必ず2.26は教えますけども、阿部定事件は絶対に触れません。でもその2つでやはり1セットなんですね。

 やっぱり30年台と60年台ってのは大いに似通っていて、一方で学生運動、ヒッピームーブメントみたいな共産主義的な盛り上がりがあり、もう一方ではロックンロール、テレビ、映画、そしてヴェトナム戦争というアメリカ的な娯楽が爆発的に流行してそれが相互に絡み合いつつ、熱い、時代を生んでいくというわけ。


 親友交歓

とんでもなく失礼なヤツが客に来たというお話

メリイクリスマス

 太宰がついに津軽から東京に帰還、太宰は田舎者だといってますが、ワタシは太宰は東京って街がすごい似合うと思う。

フォスフォレッセンス

 とは燐光、のことなり、蛍光とは異なる。
なにか異色の短編で、夢のセカイと現実が交差してしまうというような幻想的なお話で、この時期の太宰っぽくないテイストです。