2019年12月18日水曜日

1921  赤い館の秘密  アラン・アレキサンダー・ミルン

  およそ100年前の作品。

ミステリー界隈では有名で、いわゆる、黄金時代、の作品です。

 ミステリー界隈ではこの1920年頃の黄金時代の作品トップ10とか、黄金時代トップ7とか、なぜかこのあたりの作品をまとめたがるみたいです。まぁそういう名作がとりわけ集中して発表される時代ってのがあるものですよね、日本映画でいうところの1950年代ですか。
 それ以後の全部をあわせたよりも、いい作品がその集中している。

 なんでもそうですが、名作ってのは集中するものです、でもそりゃそうだって話で、人口が多い時代、が黄金世代、になっているだけです。19世紀末の人口爆発、第一次、第二次大戦のベビーブーマー、このへんが20~30代、って時代、がつまるとこ黄金世代。ようするに確率の問題で、100人の中から一人選ばれるのと、1万人の中から一人選ばれた人間、どっちが優秀か?っていう話です。


 まぁそんな黄金時代、の分析はいいとして、かなり有名なミステリーです。ミルン、っていう作家は、劇作家でして、あの「くまのプーさん」の作者らしいです。くまのプーさんが小説だったということすらワタシは知りませんでしたけれど。


 ミルンは本格的な長編ミステリーはこの一冊しか書いていないので、たった一冊で歴史に名を残すというかっこいい経歴の持ち主。

 最初の端書き、の部分で、こういうミステリーは良くない、というのがあって、むしろそこが一番おもしろいのかも。曰く

・探偵が特殊能力や特別な知識を持っているのは良くない。誰にでも論理的に考えると導き出せるものが推理である。

 これはすごいそのとおりだと思いますね。僕は骨相学をやってるからあのヒトを見てすぐにこいつはチュートン人だなってわかった。チュートン人はこういう性質がある・・みたいなのや、遺伝子操作の結果こいつが犯人ではないとすぐにわかった。
 そんなの推理でもなんでもないですよね、なんじゃあそりゃあって話。

・色恋沙汰が絡んでくるのは良くない、そんなのどうでも良い。

 これもすごいそのとおり。捜査の進展とともに探偵と女が仲良くなって云々・・・まぢでどうでもいい、が、一般には色恋が絡んでくるものが多いですね。コナンと蘭ちゃんみたいなこって。


 トリックはもちろん明かせないのですが、たぶんこの手のトリックの元祖なんでしょう、だからこそ、歴史に残ってるわけです。



 ミステリーってのは、議論がされますね。ミステリー以外のものってのは議論、されないのに。ミルトンの失楽園の韻の踏み方はどうだ、みたいなことをしゃべってるやつはまず一人もいない。けど、やっぱりアガサが良い、ダン・ブラウンみたいなのは・・、黄金世代作家のがよい、やっぱホームズ、密室ミステリーは・・・みたいなのをしゃべってるのは結構いる。
 ミルトンになど誰も興味がない、といってしまえばそれまでなんですが、シェイクスピアは名作か?みたいなのも誰もしゃべっていないのにミステリーだけは色々議論されるのは、ミステリーってのはやっぱ、小説、とはまったく違うものとされてるからなんでしょうね。ミステリー小説、っていう小説の中にミステリーを含むのは良くなくて、ミステリーはミステリーっていう音楽、と映画、みたいに、まったく違う形式なんだと思います。