2012年1月21日土曜日
elemental particles 素粒子 ウェルベック
まず、アキ(知人)がウェルベックの素粒子を読んだメモから引用させて頂きます。
「この本のせいだけとはいいがたいのですが、私はこの本を読んでる途中から猛烈な吐き気と下痢に襲われて、大げさとはいえ精神的には生死の境をさまよった。枕元に拳銃があれば確実に自殺していた、私が吐き気ってものに猛烈に弱い精神構造なのかもしれない、いつも人間はそれでも生きなければならんとかかっこつけて言ってるくせに肉体的苦痛にはお話にならないくらい弱いのである、そこが女の子知識人としての私のカワイイところでもあるのですが。ともかくこの本はあの吐き気が一週間も冷蔵庫に安置されていたエスプレッソコーヒーと牛乳の混合物の仕業でもなく、単なる風でもインフルエンザでも、食べ残しの牛丼のせいでもないとすればこの本はアキに本当に嘔吐させた始めたの本です、それが本当ならこの本は「身体的苦痛」を伴う唯一の本に認定してやりたい。(岩波文庫の資本論もその字の小ささと印刷の不明確さと、旧字体のオンパレードで若き共産主義者を全員ド近眼にするほどの有毒本でありました)。ともかく吐きに吐きまくった、サルトルの嘔吐などとは比べ物にならないくらいすべて吐きつくした。胃と腸がからっぽになるのがもうすぐにわかったし、吐いたあとのあの鼻のツーンと口のクサさを軽減する為に飲んだ緑茶でさえ、一滴も残さずにすべて吐いた。吐き気が収まるとすぐにトイレが永住の場所になってしまい、パッキンがいかれた水道みたいにプーを垂れ流しの廃人状態。しかしともかくやることがないので、トイレの中でこの小説の終わりまで読むことにした。そして読み終えた。
思ったのは、やはり次の革命もフランスが発火点になるのではないかという予感です。というのは今のフランス、極右政党が平気の面で人種差別をやってるポンコツ国家、見事にいわゆる先進国とやらの中で一番ポンコツで崩壊寸前だからでしょう。チリやエジプトで民主化革命が起こっても、中国で資本主義化が進もうともあぁまた昔の過ちを君たちも繰り返すんだね、くらいにしか思わないけど、世界で最初に人権革命を起こし、あらゆる戦争に負け続け、ナチスには二週間ももちこたえられなかったのに何故かずっと戦勝国ズラして一流国の対面を維持しつつ、内部はもう末期がんどころではないこの国、が民主主義の次の段階、ソ連的一国社会主義ではない、スウェーデン式社会民主主義でもない新たなシステムの発火点になるのは大いにありうる事だろうなと思う、それはどこが発火点になろうと結果的には全世界的なものにならざるを得ないから。この小説は人類が滅んで、有性生殖によらない不老の新しい種族を遺伝的操作で生み出すことで終わるのですが・・・あまりそれは重要ではないんですよね。まぁ一応サゲをつけたってだけで。けどそう・・・こういう科学的な進歩によるパラダイムシフトが来るのか(例えば核融合、ナノテク)、それとも上記のような政治経済上のシステム変換が大規模な内戦の後に確立されるのか、それともすべて間に合わずに環境崩壊やパンデミック、核汚染によって人類は深刻な文明的退行?、あるいは絶滅するのか。この3つがたぶん私達が目にするミライだと思います、たぶんそれは結局のところ同時進行的で、一方で自然環境によって死滅する人々、一部の科学の楽園に住む人、世界政府の確立の為に命を落とす人などなどがいながら21世紀を形作るのだと思われます。人類は絶滅するとは思えないなぁ・・・人為的な方法によっても人類を滅ぼすのはそうとう難しいと思う、だって原子力潜水艦に攻撃する方法が無いもん、あと宇宙ステーション・・・」
私の言いたいこともアキとほぼ同意見です、結局のとこ内容は何百冊も書かれたきた60年代を中心にした20世紀クロニクルにクラーク的SF要素が入ってるだけなのですが、それがフランス目線で書かれているのが珍しいだけです、そういうのはほぼアメリカ小説だったから。(ピンチョンとかね)だから別に小説としてはそれほど完成度が高いとは思えない、ただ本質的なテーマは時代の急所をついてる。アキの言うような3つの21世紀の大きな潮流のエンジンが唸りをあげているのが聞こえます。