2018年5月18日金曜日

1995 レベルE 冨樫義博

 冨樫義博はもはや、ある種のアイコンと化していて、ゴッホが生前には一枚の絵も売れなかった、才能ある芸術家とはそういうものなのだ、という売れない芸術家の言い訳の代表となっているように、富樫が休んでるから、オレも休む。富樫の連載が再開するまでオレ、休む。みたいな、怠け者の氏神のようになっております。あるいは未完成のまま発表すると、富樫クオリティだから、という言い訳も使えます。更に巷で中二病、って言われてるものの大部分が富樫マンガを出発点にしてたりもして、中二の神でもある。


 体調不良だとか、ゲームにハマると仕事をしなくなるだとか、都市伝説が錯綜してますけど真実は誰も知りません。


 けどとにかく才能人だってのは誰にとっても、確か。というか現在のマンガ家で一番才能があるとワタシは思います、才能、だけで描いてるという感じ、才能が突出してるっていう印象ですね。

 マンガ家に要求される画力というのが跳ね上がってしまって、その半面、絵はキレイだけど内容0、っていうマンガばっかりになってしまいました。
 それはマンガに限ったことでなく、テレビもアニメもなんでもそう。ぱっと見、で良さそう!っていうのが伝わらないといけなくなりました、堪え性が無くなったとよく言われます。NOW Generation 今すぐ! 手に入ったり、楽しくないといけない。フリが長いものは嫌われますし、わかりにくいものも受け入れられなくなってます。


 ハリウッド映画を見ると如実にその傾向があって、まずオープニングの5分くらいに激しいアクションがあって、わぁ~金かかってる、っていうのを見せつけてあと80分、ダラダラしたベタベタな展開の後、最後にどんでん返しっていう感じ。中だるみばっかりです、でも最初に面白いよ、っていうのを伝えないといけないから、全体でさらにきちんと構成を作って、たくさんフリを効かせてっていうのが出来ないからそうなるんですわね。
 昔ですと映画館に入ってしまえば、せっかくカネを払ってしまったのだし、最後まで見るか、クソ!やっぱりクソ映画じゃねぇか金返せ!っていうふうになっていましたが、今はオンラインで、さらに定額だったりするので、これはどうかな・・はいつまんない、次・・、はいつまんない次・・・ってどんどんスイッチされてしまうのですね。


このレベルEという作品は幽遊白書、HxHと比べて圧倒的に知名度が低いのですけど、これが富樫の最高傑作と言いたがるファンもいます。ようするには宇宙人モノの短編集なんですが、ゆったりペースで書かれていますので、富樫作品の中で一番絵が上手だと思いますw



 富樫マンガっていうのは、マンガしか出来ない構成ってのを持っていると思います。ちゃんと考えて理解してから、読まないといけない。映像ってのは考えネタみたいなのは使えません、どんどん流れていってしまうので、それにしゃべりコトバなので説明が複雑だと全然わからない。あと実際の尺で長台詞をしゃべるのはすごく不自然でもあります。人間ってのはそんなに理路整然と長くはしゃべらないものです。

 マンガはちょっと立ち止まって、えっ?どういうこと?っていうのを読者が納得して、行きつ戻りつして読める、小説は説明は出来るけどアクションを描くことが出来ない。マンガ、というメディアでしか出来ない、物語、の形態、それを最大限活かしてると思うのですよね、だから面白い。


 ワタシは富樫マンガの絵も好きですけどやっぱプロットが他のどこにもなくて面白いっていうのが一番だと思いますね。

 何故か女性ファンが多いのも富樫ファンの特徴ですが、これはなんでしょう、やや耽美的な感じが女性が好きになるのですかね?あとファッションデザインが独特であります。凝った服を着てることが多い。(1コマくらいしか登場しないことが多いけどw)