2019年4月23日火曜日

1965 DUNE デューン 砂の惑星 フランク・ハーバート

  ワタシはSFほとんど詳しく無いのですけれど、SF界では相当に有名な作品のようです。
オールタイムベストSF小説!みたいなのでもいつもトップ10に入るくらいな。

 でも内容はSFというか・・・SFファンタジーっていう感じですかね。魔女、とか教団、領主・・とか。むしろミライというよりは、中世チックなものばっかり登場しますし、もちろん魔術とかも登場します。
 魔女て! 宇宙時代に魔女!?


 魔女がいればもちろん魔法も存在し、主人公は未来視が出来ます。というわけで、サイエンス、の部分はかなり少なめ。ほぼ無いといってもいい。

 物語は、ぶっちゃけめちゃくちゃです。魔女はかなりの訓練を受けていて、コトバ、で相手を操ることができる、さらに人並み外れたメンタリティや観察眼を持っていて恐ろしい人間・・・みたいな説明をえんえんしていたのに、寝込みを襲われてあっさり捕まる。いやいや・・魔女特有のなんかすごい観察眼とかいうのはどうなったんじゃい・・・むちゃくそ簡単にやられてんじゃん・・・
 あるいは、毒物検査器、があるのですが、これは毒物検査器にひっかからない秘密の毒です・・・いやいや、これはその毒物検査にひっかからない毒物もわかる未来視です・・いやいやいや、これはその毒物検査にひっかからない毒物を見分ける未来視でも見分けられない秘密の毒です・・・・

 みたいな調子で小学生の喧嘩かよ、っていうようなトリック・・・。トリックでもないですよね、まぁSFだからなんでもありですので。
 SF、っていうのはやっぱりいつでもこの、じゃあなんでもありじゃん・・っていうのがワタシはつきまとってしまいます


 しかし世界観、は相当練り込まれていて、いろいろキラリと光るアイデアもたくさん出てきます。もちろんですが、環境の悪い場所という舞台設定、ソプター、なる羽ばたき飛行機械、砂漠に生息するすべてを飲み込むサンドワーム、水の蒸発を防ぐスーツ、フレメンなる砂漠の民・・・

 たぶん宮崎駿もこれを読んでたんですね、ソプターだけでなく、なんとなくナウシカっぽい、ここからアイデアが来ていたわけだ。よくFFで登場するサンドウォームの元ネタもこのデューンから取られていたんですな。
 なぜか欧米人はこのワームっていう、超巨大な線虫みたいな可愛さもかっこよさもかけらも無いモンスターが好きでよくゲームなどに登場します。だいたいはとにかく巨大、で生命力が強いという設定。


 このシリーズもサンドワームのようにヴォリュームがすごいあって、文庫本三分冊だったので、これがデューンっていうののいくつか出てる物語が全部入ってるのか、と思っていたのですがさにあらず。文庫本三冊でようやく、デューン第一章。っていう感じでめちゃくちゃ長い。ようするに第一章だけで普通の長編小説三冊分のヴォリュームがあるというわけ。そんな超大作を読もうとは思ってなかったので少しめげました。 
 最後に付録として設定、みたいなのが書かれているんですが、とても読めたものではない・・、でもよくここまで練り上げたものだ、と思いますね。
 原作は20年にもわかって書き続けられておって、このフランク・ハーバートなる作家のライフワークのようです。
 欧米って長い本が好きですよな、誰が読むねん!っていう巨大な本を普通に出す、ほんとに誰が読むのだ・・っていう。SFもシリーズとかですげー長いものがたくさんあります。世の中にそんなSFファンっていうのがいるのかなぁ・・、ワタシは現実でSFファンってヒトを一人も見たことがない。まず殆どのヒトが本を読まないですものね。



 後半からなんというか、60年台だな~・・・っていう感じが濃厚に出てきます。一言では説明出来ないのですけど、カウンターカルチャーの裏の部分っていうのか。ハードオカルトっていうのか。ピンチョンとか、トゥルニエとか、現代文学っていうのには必ず出てくる、大江健三郎とかにも出てきます。この手のやつ・・・本当に説明が難しいですな、ようするには、アンチ科学、みたいなやつのもっとタチの悪い陰湿な類のもの・・・
 そしてもうひとつ、宗教戦争っていうテーマがあります。多くのヒトがなるべく避けて通りたいテーマ。タブー中のタブー。この本では多少ごまかしてますけども、いや思い切り、アレだろ!アレのことだろ!っていうテーマが頻出しております、今そういうことを書くと暗殺されたりするので誰も言わなくなってきました。


 総じて・・・、確かに優れた作品ではあるのですが、かなり短くできる、三分の一くらいにできるのでは?って感じ。この作者は言いたいことを全部言ってやる!って感じの書き方で、テンポが悪いし、同じことを何度も言ってる気がします・・・今の若者には到底読み下せないだろうな・・っていう感じ。はっきり言って読みにくい。されど、とにかく作者の情熱、とこれに費やした時間、労力、みたいなのがすごい伝わってきます・・・
 でもやっぱ続編を読む気にはなれぬ・・そういう感じ。