2023年6月14日水曜日

1987 watchman ウォッチマン

  オススメのアメコミを教えて。みたいなランキングだと、必ず上位に入る作品。コミックなのに、SFの賞や、小説の賞なども獲得していて、コミックであり文学、として認められてるということなんでせう。


 だが!私みたいなアメコミ初心者が、アメコミってどんなもんじゃろか?と手を出すには一番よくない作品ですので、アメコミの名作とりあえず読んでみっかー、っていう人は絶対に手を出さないほうがよい。


 いわばドン・キホーテ的な作品で、ドン・キホーテは騎士道物語、というのがたくさんあって、それのパロディ、アンチテーゼという作品です、このウォッチマンもそうで、アメコミのヒーロー作品が有象無象とあるが、それのアンチテーゼです。

 だいたい名作や歴史に残る作品って、王道の作品よりもこういう、アンチテーゼ的な作品が多い。いわばロック歌手が唯一うたったバラード、みたいなもの、それだけが代表曲として残るみたいなことが多い。


「ヒーローに人類は救えない」

 というのがこのコミックのテーマです。ドン・キホーテはコメディですが、このウォッチマンはそれをとってもダークで陰鬱に救いがなく惨憺とした世界で描いております。

 あぁ世紀末の作品やなぁって感じですね。濃密に漂うもうすぐ世界が終わるっていう、終末感。ひさびさに濃厚にコレを感じる作品が来たかって感じ。


 ひじょーーーーーに複雑で難しく、アメリカの現代史の背景知識などもないと解読困難。舞台も1930年から1980年代後半にかけて、非常に長い。

 舞台も時間や空間をころころ変わる、ポストモダン的な演出でややこしい。ただ、まったくめちゃくちゃなごりごりのポストモダン小説と違って、コミック、絵がありますので、エンタメ作品としてちゃんと成立しています。これを言葉だけでやろうとすると、まったく意味のわからんものになってしまうわけ。


 確かに名作と言われるのは納得、なんにせよ、すごい熱量、で描かれている。病的な、エネルギーを注ぎ込まれている。本文にあるんですけど、あまりにもグーーーンと重苦しいものが注ぎ込まれているので、息苦しくなって本を閉じたときにあ、はぁ・・・って安心するような本です。

 

 疲れてる人や、精神的にちょっとまいってる人にはまったくオススメできない。めちゃくくちゃヘビーな本です、ワタシ英語で読んだんですが、むっちゃくちゃ難しかった・・・コミックなのにここまで難しいのってほかにないんじゃないでしょうか、まじで、ぎちぎちに内容が詰め込まれていて、すごい熱量です。胃もたれまくり、むかむかしまくり、くらってしまう、胸糞でもある。健康状態を整えて、精神衛生もよくして、じっくり腰を据えて読めるひとは是非読んでみるべき作品。ただ本当に、アメコミ初心者、にはおすすめできない、超エキスパート向けの作品だと思う。


 映画もあるので見てみようと思います、というのは、ちょっとやっぱ難しすぎて内容が汲み取り切れなかった気がする・・、映画のほうがたぶんわかりやすくなっているでせう。