2023年12月25日月曜日

1929 ローマ帽子の謎 エラリー・クイーン 中村有希訳

  作者のエラリー・クイーンというのは架空の人物で、この小説の主人公がそのエラリー・クイーンです。そしてこの小説がデビュー作ということになっている。


 この小説の登場人物が、この本を作ったのですよ。っていう本自体がフィクションなのですね。メタフィクションとも言える。いわば金田一耕助 作「金田一耕助の事件簿」

 でもそれじゃあ本当の作者がわからないではないか?まさにしかり。つまり匿名作家ということになります。思い切っておりますね。


 そういうわけで、冒頭の序文、もすべてフィクションです、非常にわかりにくいですね。


 ただ小説本体となると、最初に登場人物をすべて紹介し、この中に必ず犯人はいる、と説明し、さらに事件の場所の詳細な図みたいなのも最初に発表します。


 いわばござんなれ体制というのか、よっぽどトリックに自信があるというのか、読者に真っ向勝負を挑んでくる、まさに王道の作品です。本を見れば一目瞭然なのですが、文庫で500ページ近くなる大作。登場人物はなんと25人を超えます。こいつは、どでかいヤマになるぜ!!って感じの本です。


 ミステリものなのでもちろん結末は明かせませんが、ワタシは正直トリックが成立してない気がしました、確かにこいつらの中の誰か、というのは決まるけども、一人には決定出来ないです、これでは。

 あと探偵は手にしてるのに読者には公開しない情報があるのはずるいし、隠し通路は無いといいつつ、隠し通路はありますし、隠し場所はないと言いつつ、隠し場所はあります、これもずるいです。とってつけたようにそれはないだろ。


 物語としても、息子のエラリーにベタベタな親バカ親父、というコンビは気持ち悪いです、なにこれ・・・?って感じ。あと謎の美女、も薄いし、犯人のキャラ造形も薄い。

 さらにこれはエラリーのせいじゃないけど翻訳の文章もヘッタクソです。なんでこの本がそんな人気があるのかワタシにはさっぱしわからん・・・。作者のデビュー作で24才くらいの作品だってことで大目に見ろってことなのかしら??

 カー、エラリー、アガサ、が三大本格ミステリ作家ということになってるようですが、アガサのほうが断然良いといえますねぇ・・・。