2016年11月26日土曜日

1598 ? Much ado about nothing シェイクスピア から騒ぎ

 シェイクスピアの喜劇、およそ中期の前半くらいの作品。

 仮面劇、騙し合い、取り違い、コトバ遊びとスピーディな掛け合い、貞淑な美女、結婚、愚直な武人、清廉潔白な領主・・・

 といったシェイクスピア喜劇のお得意の仕掛けがふんだんに使われていて、おおよそこのタイプの喜劇は完成したかなっていう感じです。


 ただ真夏の夜の夢、みたいなファンタジックな色彩を取り入れた大傑作があるのであまり日の目を見ることはない作品でもありますね。
   

シェイクスピアは劇団付きの作家ということもあって、同じような作品のバージョン違いみたいなのもあるわけですね、今年のシーズンの喜劇はこれ、悲劇はこれ、歴史劇はこれっていう感じでどんどん作品を書いていくので。



 シェイクスピアは確かにものすごい才能もあるわけですけど、それに加えて運もかなりあると思うのですよね、作家運というのですか。選んだ題材が自分でも思ってなかったようなはね方をしたり、深淵な意味を次々と含むようになったりと。特にロミヲとジュリエットとかはそうだと思います。作者本人も予想しなかったほどにものすごい完成度の高い作品が生まれてしまう、これは運なんですね。だから作品を書くのは面白いのです、思わぬ展開、思わぬオチ、書いてる途中であっ!って見つかるわけですね。



どんな作家でも作品全部をきっちり計算して描くなんて不可能です。モーツァルトは一回も直さないでピアノを弾いて曲を完成させたとか、ドストエフスキーは下書きを書かなかったみたいな神話がありますけどどれもこれも大嘘です。ドストエフスキーにいたっては小説それ自体に匹敵するくらいの膨大な構成ノートみたいなのを作ってから作品を作ってますし、実はモーツァルトだってものすごいストイックな努力家であるのは間違いないです。勝手に後からイメージがついてまわってるだけで。


 ただこの作品にはそこまでの神通力は発揮されなかったかもしんないですね。世間の評価的には実は高い作品なんですがワタシ的にはちょっとイマイチ。