2017年11月9日木曜日

1906 趣味の遺伝 夏目漱石

 夏目漱石が日露戦争の凱旋の模様を見てから起こった事件について記した、ドキュメンタリー的な作品です。たぶんフェイクドキュメンタリーではない・・はず。


 WIKIなどによると厭戦的な小説であるとありますが、別にそれが主題ではないし厭戦的でもない。ただ漱石は浩さん、なる旧友を戦争で失ってそれについて書いているだけで、浩さんは名誉の戦士を遂げた英霊である、みたいな戦争を賛美する内容であったとしたら、それは小説にはならないです、だって世間の一般論を言っているだけなんですから。


 よく反戦運動、とか平和運動、みたいなことをやってますけども、なんか釈然としないところがあって、日本が戦争で勝っていたころ、実際には、戦争はいけない、なんていうやつは本当に少なくて、凱旋などを迎える民衆は本当に熱狂的、強熱的に歓迎ムードでしたし、メディアも、政府に言わされているとは到底思えない賛美をしていました、戦争で負けそうになると、政府に言わされているだけだったり、戦争を批判する人間は抑圧されたりしましたけれども、あの民衆の狂乱ぶり、とかそういうのは、一体あれはなんだったの?っていうことについて、まったく説明されないことがありますよね。
 特にNHKでは、戦争に勝利しているサイドがどれだけそれに対して歓迎とか賛嘆してたところっていうのはバッサリカットしている。

 
 そしてどうも私はあの、凱旋将軍に対して狂乱して盛り上がっていた民衆と、反戦運動とかデモに参加する人間が、同じ人間だという気がするのです。まさしくこの小説の題名の通り「趣味の遺伝」、DNAが同じ人間は、同じようなことを時代を変えてするということなんです。

 逆のことをしてるようで「体制側に属してみんなで騒ぎたい」というおなじ趣味の遺伝が起きているという気がするのですね。


 この小説は日露戦争を当時の人がどんな感じで受け取っていたかっていうのだけで歴史的な価値がありますよね。GHQの手が加わった、政府の公式声明ではない、リアルな当時の人間の感想です。

 
 ただやっぱり不思議なのは、決死隊として突入する浩さんの場面が想像で描かれているわけなんですが、なんでロシアと戦わないといけない??っていう疑問を持っていなかったのかってことですよね、ロシア?どこやねん?って話ですよね、現代でもロシア??ロシアって何よ?っていう感じでロシアについて理解してる人間なんて一握りですし、ロシアの文字がキリル文字だってことすら知らないのが大多数です。それと戦争する?一体どこのだれかわからない人間と、それに対して命を捨てられるか?っていうとものすごい疑問です。ワタシは無理ですね。
 ロシアと戦争するっていうのがどうも非現実的すぎて、体が動かない。