2017年11月25日土曜日

1974 おにいさまへ 池田理代子

 おにいさまへ、というタイトルからいくと、ブラコンとか、兄妹の禁断の愛みたいなマンガなのかなぁと思いきや、実は全然違います。真逆といって良い。シャープな百合マンガです。

 貴族的女学校?に入った主人公が女たちばかりの社会で、さらに学校の中にあるエリート集団に入ることになり・・・という。百合学園モノのお約束的なのがふんだんに盛り込まれております。ワタシは百合マンガ、まったくと言っていいほど詳しくないんですけど1974年でこんなのありなんか!?っていう展開で度肝を抜きますね。少女漫画とありますけども、すごい大人向けマンガです。


 ワタシはすごい関心したのは、主人公たちのファッションですね。そのセンスとかはいいとして、常に違う服装をしてるんです、毎回毎回違う服を着ている、そんな服ありえないだろ!っていう古典ローマとかギリシャ風の服を着てたり、ロリロリな服からゴシックまで、脇役ですら柄物のワンピをコロコロ変えていて、すげーって思いますね。脇役の服なんて考えるの面倒だから同じ服にしたくなるじゃないですか。それに髪の結び方などにもバリエーションがたくさんあって、これもすごいです、この辺さすが少女漫画ですよね、男の漫画家でそういうセンスを感じさせるようなヒトはいません。井上雄彦に誰もファッションのセンスを求めてませんし。
 けどワタシはキャラデザってのはそいつのファッションを決めることなんだと思ってます。顔とか目の書き方ってのは、モーフィングみたいなもので、だいたいの定番ってのは決まっている、それに実は顔の形なんて特に美男美女はみんな似通った顔をしてます、かき分けが出来てないとかいうけども、パリコレなどのファッションショーを見ると、だいたい美人の顔のパターンなんて3種類くらいしかないってわかります。もちろん東洋人とか黒人を使うことでバリエーションを出せますが、それはキワモノっていうか裏技みたいなものですからね。
 だからどういうファッションか、っていうのがキャラデザのほぼすべてだと思っています。けど、なかなかマンガで、すげぇファッションセンスだ!っていう作家はいませんね。本職のデザイナーでも、うぅん・・、いまいちってのが多い。斬新なファッションってのは難しいですよな。

 作品に話を戻すと、このマンガは女の嫌な部分がゴリゴリに出ている、露悪的な作品でありつつ、しかし憎めないかもしれない、と思わせる作品でして、ということはこの作品はよく出来ているんだなって思いますね。
 女ってのは、すごい自己中なんですが、自分が悲劇の主人公になりたい、ものすごい不幸とか、ものすごい苦労が襲ってきても、なんかそれをドラマティックに波乱万丈に生きてみたいっていう、このマゾ野郎!っていう薫のセリフじゃないですけど、そういう、悲劇のヒロイン願望ってのがあるんでしょうね、それはでもある種の強さを持っているってことでもあって、女性の良いところでもあるわけです。

 それとこのマンガ、最後の終わり方が素晴らしいです。終わり方でものすごい好きになりました。文庫本で2巻なのでぜひおすすめしたいです。


 百合というジャンルについて付記すると、百合、というジャンルにかぎらず、女性向け作品で「セーラームーン」が女向けオタク業界に与えた爆発的な衝撃は、一般的なオタクの「ドラゴンボール+エヴァンゲリオン」よりも甚大のようです、セーラームーンを子供のときに見て育ったセーラー世代が今クリエイターになってて、こぞってセーラーについて何かを持っています、大好きだったり、くそがっ!って思ってたりどちらにせよ。百合ジャンルってのが男のヲタクのマネーで動き出したのもそっからみたいですね。