2017年11月15日水曜日

1908 夢十夜  夏目漱石

 教科書にもよく採用されている、漱石の中でも有名な作品。

 けど漱石の作品としては異色でして

「こんな夢を見た」

 という始まりで、10夜の夢物語を語るというものです。夢なんてものはそんなにはっきり覚えていることもないしディテールがあるわけでもないので、夢といいつつ、ちょっとしたアイデアを夢から得て、それを膨らまして物語にしてるというものでせう。


 ややファンタジーっぽい感じで、どっちかというと写実主義の漱石の作品の中で色が違う作品です、そのちょっと幻想的なところがこの作品が人気がある故なのかもしれません。


 漱石の描く美人ってのは、だいたい漱石の作品には美女が登場するのですが、当然和装でモガじゃないんですけど、絵が浮かんでこないです。ただ美女であるとか瓜実顔であるとか、心持ち首をかたむけてしゃべる・・とか。具体的にどういうのを漱石は美女として描いているのか?っていう絵を描きずらい。漱石の趣味がわからんのですね。だいたいシェイクスピアが想定している美女は思い描ける、クレオパトラはたぶんこういう感じ、ポーシャの顔つきもなんとなく描ける。けど、明治の日本の美人、っていうののテンプレがよくわからない。
 西洋ってのは美女、の基準がずっと同じなんですよね、ギリシャ・ローマ時代から、今のスーパーモデルみたいなのまで、ほとんど同じプロポーションと顔つきをしてる。けど日本はカメレオンのように流行り廃りが変わっていて、太古の時代、宮廷時代などコロコロ変わっていてよくわからん。浮世絵の美人ってのもなんだかわからない。

 
 漱石ってのはどうもモテたようには思えないし、女遊びをしそうなタイプでもないので、女性、の内面、っていうのがほとんどないような気もします。外面的っていうのか、一般的な型、として性格付けをしているというのか。そして常に、自殺と神経衰弱のイメージが背後にある。それはこの夢十夜でもそうで、悟り、切腹、入水、死、のイメージが次々と現れる。それが漱石の現代的なところで、そういう世界観とかイメージみたいなのが、漱石がずっと色あせない理由なんでしょうね。一言でいうと、暗いんですね。