太宰治にたまにある、むちゃくちゃに書きなぐったような作品。実際には全集に収録されるまで発表されてない未発表作なのでさもありなん。
太宰が芥川賞が欲しくてみんなに頼んで回った、太宰治かっこわるい、というエピソードがありますけども、あらゆるかっこ悪いことをすべてこなしている太宰治にそんな悪評なんて屁の河童ですね。
ワタシは最近、太宰治ってのは第二次大戦前の日本、って言う時代を代表する作家なんだよなぁというのをすごく思います、漱石は明治そのもの、文明開化そのものを体現している作家ですが、太宰は戦前の日本というのをがっつり反映しているのです。
戦後に書かれた戦争あと話みたいなものがたくさんあるし、戦争世代の作家っていうのはそっちの戦後に、作家になった人たちのほうがを言うんですけど、でも本当の戦争世代ってのは20~45年に活躍している作家ですよね。
けれど太宰の作品で直接的に戦争の話やら、軍国主義の政府の話なんかが触れられることは滅多にない。でもやっぱりその社会状況がすべてなんじゃないですかね。
作中でジャンキーとしてのエピソードが書かれてますけども、やっぱりそういう時代のものだと思います、戦争がなくて、何もやることがなくてスリルを求めてドラッグに向かうのと、現実があまりにもリアルで、それから逃げるためにドラッグに走るのとでは全然違いますものね。