2014年8月8日金曜日

夏目漱石 坑夫 1908

 Iはパソコンがう~~~んと唸ってる(レンダリングね)時の為に、にいっつも小説を用意してます、でもそれがつまんないと困るし、かといって面白い小説ってのを探すのはいちいちめんどくせいのですね、よってハズレが無い作家だと思うと、全集を全部読む、みたいな読み方をするのです。
 漱石はその中でも指折りの作家でして、坑夫、は漱石の・・・・だいたい四番目の作品です、吾輩は猫、坊っちゃん、草枕、二百十日?野分、まではアマチュア作家というか副業としての作家だった漱石が虞美人草から朝日新聞に書くフルタイムの作家になったわけですが、ハッキリ言って虞美人草は漱石唯一の駄作です。読者の人気を取りに行ってしまった、黒歴史的な作品。そして次が坑夫ってわけなんですが、漱石ってのはもうデビューからほとんど完成された作家で、猫は多少荒いけど、草枕、野分なんてのは、もう完全に完成してます。

 漱石ってのは東大文学部の教授でして、生活が安定してる人間だってのもかなり大事なことですよね、若くもないし金の為に書かなきゃいけない身分でもない、太宰とかとはどえらい違いです。

 だから心配無く読める、もともと別の作家が書く予定だったところを急遽埋めなくてはいけなくなったという事情のために坑夫は漱石の作風とは異なっています。
 
 漱石の作風というのは読めばすぐわかるんですけど、超理論的に精神の動きやらストーリーの筋みたいなのを作りこんで作りこんでから、それをきっちりと名文で埋めるっていうやり方です、行き当たりばったりみたいな、書いてる本人も結末を知らない、みたいなやり方をしません。一行のスキもなく文章を作りこむっていうやり方。
 坑夫は異色作で、知り合いから聞いた話しをドキュメンタリー風に題材を活かして書くってことで全然文体が違います、小説というよりは、紀行文みたいな調子、それでもやっぱ漱石ってぇ野郎は天才ですから、作品としてものすごいまとまっています、これは小説ではない、というのを本文中でもさんざん書いてるように、プロレタリ文学みたいであり、私小説みたいであり、ドキュメンタリータッチであり、面白いです。



 内容はもう、まさに現代的って感じです。ともかく死のうと思って家出した青年が漂浪しているうちに坑夫にたまさかなるようなことになる、そこでも死んでしまうか、どうするかという煩悶をずっと繰り返すという、でも小説ってそういうものだとIは思いますね。生きようか死のうか、迷っている人間を描く、それこそ小説って気がする。だいたい漱石の主人公ってのは自殺衝動を抱えた、あまり女にモテないというか、変な幻想をオンナに抱いてる貧しい青年です。けどそれが人間だって気がする、人間ってのはみんな、貧しい青年じゃなきゃいけない、それがニンゲンの原形、だって気がしますしね。金持ちのおっさんを描いてもどうしようもない。ましてや老人なんて描いたってしょうがない。 



 しかしほんと漱石ってのは小説のカミサマみたいなとこがあって、ドストエフスキーみたいなキチガイじみた天才は抜きにすれば、トルストイとかと並ぶような大作家なのになー。いまいち海外では知名度低い。海外の人ってのはインテリで本をよく読むように思えて、全然わかってないですよね。