2016年12月7日水曜日

1913  トレント最後の事件  エドマンド・クレリヒュー・ベントリー

  ベントリーというチェスタトンの親友が書いた作品で、ベントリーというヒトは本業は記者でしたので、寡作な作品な為知らない人も多いのでしょうが、この最後の事件、は推理小説の転換期を示すものとして評価されています。



 転換期というか従来の推理小説とは確かに全然違うものです



 ネタバレ注意報 

 

 

 

というかこの作品は、メタ推理小説、なのですね。これまでの推理小説、がすでに存在していて、それを裏切るっていう筋で描かれています。


 まず一番それがわかるのは、探偵が超人的才能によってすべてを解決出来ないってことです。ホームズなら確実に成功しますけれど、トレント、は実際推理を外します。完全な裏切りですね、主人公の探偵が推理を間違うなんて。


 
 そういうわけで、主人公の探偵が何でも出来るスーパーマンから推理力に優れた普通の人間、になることで新しい小説のフェイズに移るわけです。探偵なのに何も出来ないで次々と連続殺人が起こってしまうっていうこともあるし、他の人の助けや、ただのトリックだけを考える推理小説、よりも探偵ドラマ、に移っていったってことですね。トリックなんてもうすでに限界に来てたってことでしょう。そんなわけあるかい、ってトリックになってしまいがち、だから必然的に、別の要素、恋愛だったり、情景描写だったり、人間ドラマと抱き合わせてやっていくことになったのですね。


 けどまぁその初期の作品ってわけで、この小説、たしかに斬新なのかもしんないけど、ドラマとしてのレベルはまだまだしょうもないっていう感じですね・・・。だいたいすごい魅力的な女性、ってのが出てくるドラマってのはくだらないものです。でもまぁ読者のレベルに合わせると絶世の美女がどうしても必要なわけですね、それは昨今のアニメとか作品には必ずお色気担当というか、ヲタクホイホイ担当が用意されるのと同じことで永久に変わることなし。名作である以前に商品として価値がないといけないんですもの。