2016年12月28日水曜日

-470 アイスキュロス 縛られたプロメテウス

  まず登場人物表に驚かされる、クラトス、とビアー、ビアーは権力と暴力の象徴神格、ビアーは劇中一言もしゃべらない。
 暴力を象徴する登場人物がいるだけで何も言わないのである、そんなぶっ飛んだ演出があるか?現代演劇でもそんなやり方はしない。
 そしてその内容もかなり飛んでるのである、プロメテウスはゼウスもまた権力におごりそして権力の座から転げ落ちると予言する、そんな神話はどこにもない、ゼウスの後の世界については神話は語っていない。勝手に作られたものなのだけれど、かなり説得力がある、ウラノスもクロノスも転げ落ちたのだ、なんでゼウスがそれを逃れられるかという、まさにそのとおり・・・
 プロメテウスの深遠な発言、哲学的な芝居、ぎょっとしてしまうのだけれど、古代ギリシャは文化のレヴェルがはっきりいってどの時代の文明よりも断然高い。そりゃカミサマを信じてるのは愚かしい、科学のほうが正確だけれど、実際に科学について理解してるのはほんのひとにぎりで、とんでもないクズも多い、古代ギリシャは平均点が高いのだと思う。
 
 おれは人間が絶望しないために、人間に未来に対する盲目という希望を与えた。
 
 うぐっとなるセリフ、シェイクスピア演劇よりも哲学的レベルが高い、やはりキリスト教(にかぎらず宗教は)は文明の反動だった・・・・、歴史的にはゼウスはキリストによって権力の座を追われ、キリストは科学によってその神格を剥奪されたわけで・・・科学は何にその権力の座を奪われるのだろうか?マモンだろうか?それとも巨大な反動がまた文明を押し戻すのか?