2018年6月3日日曜日

2015 フューチャーオブマインド ミチオ・カク future of mind

 今の脳科学っていうのはこのくらいまで来ていますよ~っていうのを解説する、大衆向け科学本です。
 日本ではこういう本っていまいち売れないけれど、英語圏はこの手のポピュラーサイエンス系の本ってのがかなりの売れ筋だったりします。あまり本を読まなそうな若い女の子とかが、リチャード・ドーキンスとかを読んでたりする。
 おぉ・・ん。っていう微妙なリアクションをとってしまいますね。
一方でアメリカには原理主義だの、リアルに宗教を信じていて、物理学を真っ向から否定する人々もいます、不思議な国でやんすね。
 逆に超高齢化と少子化をしてるのに移民を受け入れるくらいなら滅びるっていう感じで、頑なに純血を守ろうとする島国のほうがイカれているのかもしれませんが。

読んでて一番気になったのは脳科学の進歩よりも、アメリカ人の発想みたいなとこです。
 石油戦争でアメリカはずっと中東に兵隊を派遣してますけれど、こっちには全然そういう問題は届いてませんが、実は相当な数の兵隊がImprovised Explosive Device, IED 、と言われる、つまりはお手製爆弾によって結構な被害を受けていたんですね。知ってました? 
 これぞ戦争、っていう場面で攻撃を受けることは無くても(そういう場面はほとんどない)道端に仕掛けられたお手製爆弾で油断してるところをドカン、脊髄損傷、二度と立てずに本国帰還・・・ってことになってたようです。

 アメリカ人=バカ、自己中。というイメージをつけられがちですけど(そのイメージはトランプ大統領に投票してる!っていう感じでさらに加速された気がしますけれども)そうはいってもアメリカ人はその犠牲を払ってるんだよな、って思います。
 もし日本で、石油確保の為に徴兵されて、不具者にされてしまったら、もう絶対いかねぇ!!戦争反対!っていう短絡的結論になるはずです。なんで自分が国家の利益の為に犠牲にならねばならないのだ、っていうわけ。じゃあ石油無しの牛車に引いてもらう生活に戻るのか?というと、それもイヤだ!贅沢はしたいけど犠牲は払えない!っていうわがままを言い出すことになります。
 アメリカ人はそれがちょっと違いますね、誰かが英雄として、国家の利益の為に犠牲になる、それは名誉なことだ、っていう発想がまだある。もちろん兵隊なんてほぼ貧困階級で、奨学金とか資金援助目的で志願してる場合が多く、金持ちは戦争には行かないのですけど、そうはいっても、やはり兵隊は偉い、っていう考えがある・・ように感じる。そうはいっても、です。やっぱり純粋に人間として、このヒト戦場に行くんだ・・、っていうヒトを、偉いってワタシは思ってしまいます。それはいくら自分がお金持ちであっても、ココロのどこかで引け目を感じていると思います。


 それと成功、中毒、みたいなのも感じます。アメリカ的成功、とはもちろん会社などで出世して大金持ちになること。これしか無い、これが成功、のモデルとして一種類しか無いんだなと感じます。
 そうはいっても芸術家的な生き方、求道者的な生き方というのを素晴らしいって考えるヒトも・・・減ってきてるなぁ・・・、アメリカナイズされてもういなくなってるのかも・・・、まぁ過去にはいました。
 アメリカはそういう、芸術家、みたいなのを評価しないんだなって感じますね、良い芸術家というのは実業家で、つまりどれだけカネを稼いでるか、で決まる。成功、していない芸術家はゴミ、カネより大事なものがある、HAHA、ナンセンス、負け犬の遠吠えだろ。っていう発想なんだなぁと感じる。でもこういう発想はもはや世界がアメリカ化してきてるので、アメリカ特有のものでは無くなったのか・・。
 でもアメリカは国家宗教のある国で聖書に誓って大統領が演説する国でもあり、キリスト教は金持ちを批判してるのだけど・・ここにもやはりアメリカの分裂してるけど、それはそれ、みたいなとこがありますね。


 でもやっぱしよく考えたらおかしいってことがわかりますよね?(いや全然誰もわかってないのかもしれないですけど)脳科学が進歩して、知能の向上などが図られるようになり、人間をサポートすれば、社会的成功を収められるようになる・・・わけないのです。平均のレベルが上がるだけで、必ず成功者と敗者が生まれる。
 というか誰かが成功すれば成功するほど、もっと簡単に言えばめちゃくちゃに市場を独占すればするほど、成功者はほんの一握りになり、ほとんどの人は敗者になるに決まっています。誰かがものすごい努力してものすごいおいしい料理を作ったとしても、人間が3倍食べるようになるわけない、あらゆるものがそうです、突然すべてのヒトが家が3件以上欲しくなったり。車が10台欲しくなったりはしない。いくら努力したところで、需要の総数はそこまで増えない。パイの大きさは増えない。
 それなのに科学で社会的成功ができるようになる、こんな嘘っぱちの目的、のために研究費を求めてるのはおかしな話しです。ドーピングにひっかからない肉体強化薬の研究をするので、研究費を出せって言ってるみたいなもの、それが出来たとしたって、みんながそれを使うだけの話です。(でもそういう研究はやってますけどな)。
 目標設定の価値判断基準が間違っていないかい?


 別の話題ですけど、最近人工知能が人間の知能を超える云々、みたいなことがさかんに言われてますね、2032年にはAIが・・・っていうやつ。この本を読んでもわかりますけど、AIの進歩はめちゃくちゃ、死ぬほどスローです。ロボットはまぁまぁ進歩していますが、AIは全然進歩が見られないといってもいいくらいです。ドラえもんは道具を抜きにしても、一番希望的観測でもあと100年はかかります。
 一体なにを言ってるの?何かめちゃくちゃアホなヤツが出版業界を席巻してしまったのか?っていうくらい、意味不明の大言壮語な本がいっぱい並んでますよね。
 本当にこれは一体どういうことなのか?って不思議になってしまいます、誰かが裏で糸引いてるとしても、なんのためなのかさっぱしわかんないです。でも誰かが現実よりもAIはとっても進歩してるっていうことにしたがってるのですよね。レーガンのスターウォーズ作戦みたいな響き。