2016年1月11日月曜日

1931 M フリッツ・ラング

戦前の映画で残ってるものは数少ないです。ほんとのところはたくさんの映画が残ってるのですけど、実際には名前だけで消えてるのと同じです、記録としてコトバは残っていても流通していず、人々のキヲクから消えているから。

 誰からも忘れられた時にその存在は消えるってのは本当で、戦前の映画で実質残ってるのは、チャップリン、キートン、ロイド、の喜劇王たち、ウォルト・ディズニーのアニメーション、グリフィスなどのハリウッド黎明期の超大作。そしてこのフリッツ・ラングの映画じゃないでしょうか。フリッツ・ラングというとメトロポリス、ってヒトが多いと思いますけど、M、はトーキーの映画としてはフリッツ・ラングの初の映画のようです。


 チャップリン的な喜劇はサイレント特有のものですし、グリフィス系のお涙頂戴映画ももはや見られない、現代、の映画に一番色濃く影響を残してるのはフリッツ・ラングだとIは思いましたね。この映画つい最近作られたって言っても違和感が無いくらい現代的な映画です。


 少女だけを標的とする殺人鬼、ド変態のキチガイさんを追って警察が動き出すのですが、警察はなかなかしっぽをつかめない。そこへ、乞食犯罪者同盟、みたいな人々がこの殺人鬼のおかげで仕事がやりずらくなった、というわけで、犯罪者達の集団がこの殺人鬼を逮捕するために動き出すという。三文オペラと同じような展開ですが、こぉいう、悪いやつがいいコトをする、っていう構図は結構面白くて何度もこすられてますね。


 しかしこのロリコンの殺人鬼の役者ピーター・ローレ、ドハマり役というかw ほんとに演技か?って思うくらいものすごいリアリティがあります。キモデブの原型ッて感じ。素晴らしい!すげー。ほんとに熱演、って感じです。他の役者もいい仕事しやがる。

 フリッツ・ラングはほんとに天才ですね、ユダヤ系ドイツ人じゃなかったら、もっともっと名声を得てたに違いないですが、もちろんナチスのごちゃごちゃに巻き込まれてアメリカへと亡命・・っていう戦前のドイツ人らしい波乱の人生を送っております、いつまでたってもドイツという国は、ちょっと陰があるというか、ひょっとしたらやばいことをやりだすんじゃないか?っていうヒヤヒヤ感がありますよね。

 でも、ドイツ人はやっぱ優秀なんだとIは思います、イギリス、ドイツ、ユダヤ、この人達は誰がどう言おうとやっぱり優秀なんですよね。だいたいこのひと、すげー!何者!?って思うとこのグループに入ってくる、それ故に、ここはひじょーに仲が悪いw


 フリッツ・ラングの画の取り方ってIが思うにキューブリックに似てるのですよね、空間力があるんです、この空間力ってやつ、これだけは才能なんです。黒澤には空間力は無い、タルコフスキー、キューブリック、ラングにはそれがあるんです、だからゆーーーっくりカメラを回してもどんどん引き込まれていく、キューブリックはラングの映画を相当研究したんですかね?

 ともかくこの映画はこれぞ名作って感じ。1931年!?嘘だろ!?ってくらいのパイオニア中のパイオニアです、確実に50年は時代の先を行ってましたね、それに映像がものすごい綺麗です、なんででしょうか?ドイツのカメラの性能はすごい良かったんですね。


 それとトーキー黎明期のものですので音楽がついてないんですが、この音楽が無いってのがすごい斬新な響きを持ってます、つまり無音なんですが、それだけに、犯人の口笛、ペール・ギュントのメロディがひじょーに鮮烈な響きを持ってますね、Iも思わず吹いてしまいます、しかもこれ狙ったのかわかんないけどこのメロディの最後の高音が口笛だとひじょーに難しい音域で最後の一音だけだせないではがゆい思いをするのです、女の子を殺したくてたまらない犯人のイライラとそれが重なるのですよね・・・。


 いやしかし、これ絶対現代だったらクレームくるよなぁ・・・ハリウッドにはハリウッドコードがあって子供は殺しちゃいけないし、ヨーロッパも同じようなもんでしょう。ロリコン氷河期なんですw