2017年6月27日火曜日

1962 沈んだ世界 J・G・バラード

 バラードを知ってる人はどれほどいるでしょうか?60年台っていうのはあらゆる実験の時代でして、音楽的にも、社会的にも、いろんな実験が行われました。
 60年台というのはベビーブーマーの青春でして、とにかく若者の数が多かった時代なのですね、戦後、という世界の青春だったってわけです。青春、の良い部分と悪い部分がすごーいある。言ってみれば世界が全部中二病に侵されてるみたいな、とっても魅力的な時代です。

 今では世界は老いてしまったのでこの時代がほんとに羨ましくて仕方なくなる時があります、自分の青春時代に戻りたいっていう願いと同じように。


 文化の潮流っていうのはまずは一握りのインテリが開拓者となり、そして大衆も惹きつけるスーパスターがそれを発展させて一般化させるもんです。SF小説ってのは結構インテリの開拓者的な分野ですよね。

 文学ってのはものすごく安上がりなんですわね、演劇をやるには小屋もいるし仲間もいる、音楽をやるには楽器がいる。文学は紙と鉛筆、そして出版社へのコネ、これが一番大事なんですけど、それがあれば初められます。


 ワタシの思うオタク、ってのはSFを読んでる奴なんですね、機械とか科学に詳しい。90年台以降のヲタク、とは全然違う、金持ちでインテリ、教養がある、けれどオカネ儲けと女遊びに興味を持たないのがオタク、です、ハードオタクですね。


バラードはSFのニューウェーブ、という純文学的なノリ、のほうを開拓した作家です、文学的SFっていうのですか。エンタメ小説みたいに、エロい女、魅力的な武器、帝国、銀河大戦争!みたいなことじゃなくて、深層心理、不可解な行動、心理的相互作用、そんな感じです。レムとかディックもこっちに入るんじゃないでしょうか。




 ハッキリ言って、面白い!ワクワクする!っていう感じの物語ではないです、SFとか探偵小説っていうのは、自然主義、リアリズム的な文学が頭打ちになって生まれたジャンルだと思います。俺たちはドストエフスキーにはなれないし超えられないぞ、じゃあ別の何かを考えるしかない、ってことで生まれたものです。ファンタジーってのはさらに後になって出てきたもので、SFや探偵小説がこむつかしくなったり、ネタ切れになった戦後に生まれたもんです。


 そのこむつかしいSFっていうのの代表的な存在がバラードなんですわね。そうはいってもワタシSFはそんな詳しくないんです。しかもこの作品はバラードは32才くらい、長編は二作目の初期の作品なんで、かなり荒削りが目立ちますね。焦って書きすぎてるっていう気がする。プロットも練りきれてない、けど新しいことをやってやろうっていう狙いとかはすごい伝わります。
  
 ん~~~、悪くは無い。ですが面白くは無いです。