アイスランドサガ、谷口幸男 新潮社 収録です。
この本も激古いので手に入らないと思いますが、この本の他に日本ではサガを扱ったものはほとんどありません。というかサガシリーズの翻訳者ってのが、この谷口幸男って人しかいないんですね、全部この人だ。ヘイムスクリングラ、もこの人がやっております。
古代アイスランド語、なんて超マイナー言語を使える人間がいないのでしょうしそんな学部ないですものね。
北欧、と一言で言ってなんとなくエコっぽくて、落ち着いた感じというイメージがあると思うんですけど、北欧ってのは地図で見るとちーちゃいけど実はかなり広大な領域でして、西洋とはやっぱし全然違う文化圏なんだなーってのを痛感しますね。
ヴァイキングする、ってのが動詞だってのにびっくりです、まるで稲刈りみたいに夏はヴァイキングで船に乗って略奪に行く。その略奪、ってことと、普通の生活ってのの境界、が無いんですよね、お決まりの行事みたいにヴァイキングに行くのです。人を殺すってことの境界、も曖昧です。エギルはなんでかわからないけど酒に酔っ払いまくると誰かを殺すのですが、まぁそれもしゃあないっていう感じの描き方なんですよね。
ともかく北欧=知的で落ち着いている、というのとはまったく真逆のマッチョな世界観です。
それとやっぱキリスト文化圏じゃない、ってのが大きいのでしょう、キリスト教化以前、の北欧、特にノルウェー、アイスランドの時代をエギル、は扱っているので、全然価値観とか、境界の引き方が違う。エギルは巨人で、オオカミ男であるクヴェルトウールブの血を弾く、禿頭で眉毛が顎まであるという、詩人、でありヴァイキング戦士です。
なんだそのキャラクター感!!破綻してますよね、現代の感覚では。巨人で禿げ上がっていて、しかも詩人、ミスマッチも甚だしい。しかも狼男の孫だなんて、盛りすぎだろって感じ。斬新極まりない。
そういう感じでサガは普通の歴史書みたいに書かれつつ、いきなりルーンの魔法を使い出したり、魔女が空を飛んだり、伝説の道具みたいなものが飛び出す、リアルとファンタジーの境界、もまた無いんですよね。
境界の引き方の違いってのがやっぱ古い本を読む楽しさですよね。
神話の類いだから短いのかなーと思ったら結構なが~くてびっくりしましたね。またこのアイスランドサガという本がでかくて重いこと・・・。けどそうとうこの谷口氏が時間をかけてやったんだなーというのが伝わって来ますね。なんかそりゃあすげぇって気がしますね、だって翻訳で何十年も人生を使ってしまうのはどうしても勿体無いとIは思ってしまうのですけどねー。自分で何かを作りたいじゃないですか、普通、古典から学ぶのは大事だけれど、それの研究と翻訳で人生を使い果たすなんてちょっともったい気がする。古代の人間は古典を学ばなかったですからね、古典ってものが存在しなかったし、翻訳する必要もなかったから。
続いてサガ、第一の傑作と言われておるニャールのサガも読んでみようと思います・・。
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引用
あと三歩足りなかったか・・・(敵の槍の盾の密集陣に突撃して)
うつ伏せに倒れた者の復讐は遂げられる