2016年7月23日土曜日

1934 オリエント急行の殺人 A.クリスティ

 探偵小説でもホームズの次に有名?でしょうか、アガサ・クリスティーシリーズ。ホームズは19世紀の人間でして、今となっては知る由もないセカイの人間ですが(スティームパンク風のファンタジーなセカイです)クリスティは完全に20世紀前半、いわゆる戦間期のヒトですね。

 この20世紀初頭に生まれたヒトが本当に羨ましいとワタシは思いますね。ひどい時代だった、とか激動の時代だったとか言われますが、人生を脚本として考えた場合に何もおこらない沈滞と停滞の時代よりも、ドラマティックな激動の時代のほうが楽しいに決まってます。実際に生きてみたらしんどいことこの上ないって言われるかもしれませんが、それでも後に残されたモノ、作品とかそういうのをみるとすべてこの時代に集中してるってことがわかります。特に1930年台ってのは黄金時代です。歴史の教科書を見ればわかるように歴史には黄金時代のことしかのこりません。江戸時代なんてぶっ飛ばして、関ヶ原からすぐに第一次大戦となるわけ。江戸時代のイベントなんて10年単位なのに、世界大戦は一日一日が重要な意味を持つ。オーストリア皇太子射殺、何月何日、ってな具合。

 私達の時代にはヒトラーみたいな半分神話みたいな人間はいません、ビル・ゲイツとか、スティーブジョブスとヒトラーを比較した時に、なんてくだらないセカイだって言いたくなりますもの。21世紀初頭の代表的な人物を考えても、ブッシュにしたってオバマにしたって、まったく器が違います。ビル・ゲイツはセカイを変えた、みたいなことをよく目にするし、ジョブスもしかり。最近ではポケモンGOはセカイを変えたと言ってました。
 けどヒトラーがセカイを変えたほどのインパクトと比べたらアトミックボムとサブマシンガンくらいの違いがあります。
 
 そのくらいあらゆることが動く、メリーゴーランドみたいな時代。作家としたらこんなに恵まれた時代は無いです。ネタはそこらじゅうに転がってる。

 このオリエント急行殺人事件はタイトルが指す通り、電車の車両というクローズサークルの中で起こる密室型サスペンス、それの古典中の古典、推理小説の古典でもあります。
 このオリエント急行ってのがポイントですよね、シリアからパリ、ロンドンへと向かう車両なんです。そこに乗り合わせたのはアメリカ、ハンガリー、イギリス、フランス、ベルギーなどワールドワイド。
 なんでかわからないけれど、この頃のセカイのほうが、セカイってのは密接にリンクしてたという気がします。日本人でさえそう、フィリピンから太平洋、中国韓国、欧米、リアルにセカイを感じることが出来た。今ではネットで簡単にアメリカ人とでもすぐに連絡を取れますが、どうもおカネで繋がったペラペラの表面だけの付き合いにしか思えない、リアルな実感が無いのですよね。触感がない。大砲を食らって初めて、あっ、アメリカという国が存在するってのをリアルに感じることが出来るんでしょう。

 推理小説なんで内容に触れることは出来ませんが、このヒトはイギリス人だから、アングロサクソンだからこう、こいつはラテン系だからこう、っていう人種的な決めつけってのをやっぱ欧米のヒトはやるんだなってのがすごい伝わりますね、そして実際にそうだし。

 人種差別はいけない、ってのはもはや憲法みたいに、犯すべからざる、みたいなことになってますけど。人種による特性、傾向ってのは存在します、これは事実。倫理ではなく事実です。
 ワタシみたいな競馬が好きなヒトは、血の思想、血統ってのは事実無根の神話などではなくて、完全なファクト、血によって子孫は決まるってことを知ってます。よく悪い貴族が、汚れた血、下賤な血だ!みたいな発言をして、正義の味方にやられますけども、でも悪い貴族の言ってることがほんとは事実なんですよね。ほんとに、血ってのは大事なんですよ、実際。


 ちなみにアガサ・クリスティーは半分アメリカ人、しかし純血のアメリカ人なんてのはいませんから、ともかく純血なイングランド種ではないというわけ。けどアガサ自身は(だいたいのイギリス人ってのがそうであるように)、アングロサクソンこそ最良の人種だと口には出さないけど信じてるみたいですね。ワタシもそう思います。アングロサクソン、ユダヤ、そしてアーリア人、天才の血統ってのはここに圧倒的に固まってますよね。
 誰かに教えられたキレイゴトじゃなくて、実際に数字をカウントしてみれば事実、ってやつに行き着くもんです。


 ポワロは作中、物的な証拠や事実だけでなく、心理、をこそ探求すべきだと言ってますが、完全なデータ主義者でデータ以外には目もくれなかったホームズと差別化がここではかられてるわけですね。