シェイクスピアという超天才にも、あまり当たらなかった作品というのはかなりあって、このジョン王もそうです。未発表?作なのかなんなのか、創作年代も曖昧です。
ただし内容はそこまで悪いというわけではないです、たぶん初期の作品なんでしょうね。まだ型に習ったスタイルですが、ちょこちょこシェイクスピアの色を出しています。特に私生児リチャードのセリフはかなり名調子でして、なによりも利益こそがおれの主人だ!という独白セリフはキレがあって良いです。シェイクスピアは開き直った悪役を描かせたら人類1上手。
ただジョン王という内容がひじょーにわかりずらくって、イメージしずらすぎますね。
ジョン王というのは、ジョン失地王、つまりフランス領土を大量に失ってしまった、イングランドの王朝史の中でも最低ランクの嫌われ者の王様です。兄はあの超有名なライオンハートことリチャード1世、英雄の弟のダメ王でして、一体全体どうしてシェイクスピアはこのジョンを題材にしたのかよくわかりませんね。けど、そこを題材にするところがシェイクスピアのらしさなのかもしれません。リチャード1世の英雄譚ならば、もはや聞き飽きるくらいあったので、逆にダメ男のほうを描いてみようっていう。
日本でいうと・・、今川義元を主役にもってくる感じですかね。そっち!?信長じゃなくて!?っていう。
けどジョン、のダメダメっぷりが、王権の衰弱をもたらし、市民の地位を上げて、マグナカルタという最初の憲法的なものの足がかりを作ったというのが歴史の真実。ダメオトコ故に、まったく狙ったわけでないにせよ進歩的な社会のシステムを作ることになったのです。また兄の獅子王リチャードは確かに武勇には優れていたのですけど、おカネには無頓着の典型的脳筋野郎でして、それを立て直したという活躍もあったとのこと。
それにしたってやっぱかっこ悪いですねw 戦に生きて戦に死んだライオンハートのほうがかっちょいいに決まってます。