2018年3月19日月曜日

1961 ニュルンベルク裁判  

 アメリカの映画のほう、実際の裁判のほうではありません。

 ものすごいお硬い映画ですが、キャストはスーパースターを勢揃いされたお祭り映画みたいなキャスト。お祭り映画なのにめちゃくちゃシリアスというのが本物志向の60年台ならではです。


内容はひたすらヘビー路線。特にブルドーザーがコンセントレーションキャンプを掃除するところなんて、うわっち!ってなります。


この映画には黒歴史として消去された過去がかなり出てきます

断種法。これがこの映画の結構なテーマ。
 断種法っていうのは簡単に言うと、精神障害者や知的障害者にパイプカット手術を強制する法律のことです。ナチスはこれを当然障害者だけでなく、反ナチスの人物に誰でも適用するようになります。

 WOW。

しかしこの断種法っていうのはナチスが生み出したものではなくて、優生学ということで19世紀末から世界的に存在していたものです、ナチスはその適用範囲を遺伝的障害だけでなくて、誰にでもあてはめるようにしたということ、あいつは精神障害者だ、と決めつけて強制的に断種手術を行う。
 しかれども、ナチスが落ち目になるともはやなんでもありで、断種なんてまわりくどいことはせずに、裁判無しで強制収容所送り、ガス室に直行ということになったようです。

 さて、この断種法ってのは、もともとは、社会保険料の削減を目的とした、財政策として出てきたものだそうです、障害者給付金などは財政を圧迫するので、断種により財政を改善しようというわけ。(ワイマール憲法は社会保障を充実させた憲法だったのでそれが裏目に出たということらしい)
 遺伝的疾患の持ち主を減らして、遺伝的に優秀な個人だけを残そうということ。


 これだけを聞くと、過去の話というよりは、ミライのSFの政府、ビッグブラザーみたいな響きがしますね。遺伝子に障害がある人間を排除するなんて、ミライの話みたい。そしてすごく現代において、痛切に響くものがあります。社会保障を充実させたせいで財政が逼迫、結果として、社会が安定するはずが、負債に喘いで破滅に向かうという。
 断種法は復活しないと思いますけど、優秀遺伝子保護法案、みたいなのは出てきそうですね、それによって社会保障を少なくしようっていうことです。



 他にもこの映画の中には、ナチスの強制収容所の映像を見せることで、アメリカはナチスを倒したことを正当化するけれども、同じようにヒロシマやナガサキの映像を見せてナチスを正当化することは許されない。というような、ドイツ人の本音なども出てきます。アメリカの映画ですが、部分的にしろ、ドイツ人の心情も拾っている。よく出来た映画です。終わり方を秀逸。名作ですね。