2018年3月17日土曜日

1988 沈黙の艦隊

 今の40~45才、くらいに世代にすごくヒットしたマンガです。

 秘密裏に建造された日本初の原子力潜水艦が独立国を宣言して、事件が起こるって言うマンガ。

 まぁ設定とかめちゃくちゃで、んなわけあるかよ、ってことのオンパレードなんですが、夢のあるお話ではあります。まだソ連が存在していたギリギリの物語なんで、今にしてみるとソ連、なつかし~、ってなりますね。

 その脱走した原子力潜水艦と手に汗握るバトル!っていう社会派バトル・アクションって感じではないです、むしろ原潜をめぐってのアメリカと日本の関係っていうのが主題の政治的なマンガ。潜水艦のバトルは約10%くらいしかなく、ほぼ政治的な論争が占めています。こぉいうのがそこまで人気が出そうには思えないんですけど、でも流行ったようです。


すごい文句を言いたいところはいくらでもあるんですが、なかなか良いことも言っています。

「日本というのは正義が無い国だ」

 これはほんとにそう思う。別にそれはそれでいいんですけど、悪なら悪らしく、悪であることを認めたらいいのに、自分たちがいい人間だとマジで信じてるやつらが9割以上で、自分が悪であるということを認識してないのが癪にさわる。

「少しでも多くのヒトに元気を与えられたらって思います!」

みたいなことを平気で言う。まぢかよこいつ

「少しでもアメリカの手先となって自分の国の経済成長だけを考えて頑張ります!」

ですよ、これが日本の目標。もっと開き直って三下の悪役の手下らしく、ひたすら下劣に、殺した時にカタルシスを生むようなヒールを演じたらいいのに。何を陰謀家の二枚目悪役をやろうとしてんだよって、それはアメリカの役じゃん、日本の役割っていうのは、「最初に殺されるザコキャラ」、同情の余地ない小市民で臆病物の糞虫。これです。自分の役割をちゃんとわかって舞台を盛り上げないといけません。

 敵、もザコ、も必要な役割です、舞台を面白くするには必須、ちゃんと自分の役をこなしましょう。日本人、というのはそういう役割をする一族なんだと思います、閉鎖的で保守的、自己中で公共心に欠けるが、ずる賢くて残虐、利己的でプライドや思想がないので、小狡いことをするとなかなか達者。


 このプライドや思想、ってのが無いってのはビジネスマンとしては必須のポイントだとワタシは思ってます、ビジネスってのはつまり、どんだけ恥知らずな真似が出来るかということで、ひたすらペコペコして、ひたすら嘘をつく。毒ガスを撒いて、ガスマスクを売る、これがビジネスの本質だとワタシは思ってます。


 話を最初に戻してなんでこんなお硬いというか真面目テイストなマンガが受け入れられたかというに、やっぱり景気が良かったのだと思います。余裕があった。80年台マンガってかなり真面目な作品やネガティブな作品が多いのです。エリア88とかナウシカとかもそう。自虐的みたいな社会批判する作品が多いのは、読み手がカネに余裕があって好景気なんですよね。だから娯楽としては硬派でシリアスな作品を読む余裕がある。



 逆にバブル崩壊以後はずっと不景気ですから、娯楽としての作品でこ難しいものやシリアスなものを読む気になれない。ライトで明るいものを好むようになる、ドラゴンボール、スラムダンク、ワンピース、ポケモン、全部明るいテイストです、社会批判など全くしない。若者は政治的なものを毛嫌いするといいますえけども、それは経済的余裕が無いからだとワタシは思います。政治とかを考えてる余裕がない。そんなことに頭を使いたくない、目先にとらわれるなというけれど、目先の生活をする余力が無ければ考える能力なんて持ちようがない、あるいは鼻からもう全部諦めている。

 バブル崩壊以後のスタイルとしてもう一つセカイ系、っていうジャンルもあります、エヴァを筆頭として、自分たちのいる小さなセカイ、とセカイ全体。しかない。学校の中での行動だけでセカイが崩壊したり、セカイがなくなったりする。学校ー社会ー世界、じゃなくて学校、自分のいるサークル、がセカイそのものでセカイのすべて。
 下手をすると、自分、と恋人、しかいなくて、恋人との関係だけでセカイが終わったりする(涼宮ハルヒなど)。


 セカイが終わるからシリアスなのかというと実は違くて、セカイが終わるというハッピーエンドの話なんですね、自分が活躍したり、関係を持てそうにない、社会が消えてなくなってしまえば良い、という願望を叶えてくれる、前向き、な話です。
 学校を出て、社会の一員となり、少しずつなにかを変えていくっていうビジョンが全く描けない、リアリティがないものだから、学校から即セカイ全体というワープをしてるわけです。これは歌とかでもそうで、セカイ系のものって非常に多い。セカイに家族とか恋人とか、めちゃくちゃ狭いサークルのことしかない、けどそれだけが生存の理由だったりする。


 今セカイではやっているものというとアメリカではずっっとスーパーヒーローものの映画をアホみたいに作っています。バカのひとつ覚えかよ、っていうくらいに。つまり現実はその真逆、現実はアメリカは誰も助けようとしない、むしろ弱い者いじめをしてるから。ヒーローがいない。よって娯楽にはヒーロー、正義、を求めるわけですね。

 
 だからまだまだこれから20年、下手すると30年はライトで内容薄め、明るい調子、っていう娯楽が続きそうですね。というかもはや、シリアスで暗い調子の作品ってのは二度と現れないのかもしれない、特に商業作品では、死ぬほど前向きだったり、現実とのつながりが希薄なものになりますでしょう。
 おカネが欲しいクリエイターはそれを念頭に置きましょう、ただワタシはイヤですけどね。